駆け出すことを懸命に堪えているといった切迫した歩み

舞台の上を歩くように、家の中から見られていることを意識しながら歩いて行った。

足取り荒く大股で部屋を横切っていく

両足は地面を蹴って、肩をいからせて、大股で歩いていく。感情が燃え立っているその姿を、私には、どうしても美しいという言葉でしか表現できなかった。 　小さな青い炎のような信子ちゃんが、校門を出て見えなくなった。 　ふと視線を上げると、街の清潔な白が、いつもより鮮やかだった。 　信子ちゃんが、この街全体を染め上げているみたいだった。

うきうきと腹の底からせり上がるような思いを足どりに見せて走る

自然と一段とばしになる階段には、今日もゴミひとつ落ちていない。 　たん、たん、たんと、まるで映画のワンシーンのように足音を鳴らす。

両腿に気合いという鞭をいれ、勢いよく地面を蹴る

白衣の裾をあおるように歩く

灯をもとめる蛾のごとくさまよい寄る

誰かの足音が路地から川べりへと移っていき、やがて聞こえなくなった。