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前後の文章を含んだ引用

......真からはわからなかった。しかしたぶんこの男は何も気づいてはいないだろうと僕は推測した。ちょうど僕がその頃何ひとつとして気づくことができなかったのと同じように。　少しずれてしまった記憶の断片を頭の中でいじりまわしているうちに──そういう行為がもたらす必然的な結果として──僕は両側のこめかみの内部にぼんやりとしただるさを感じた。それはまるで僕の頭の中にとじこめられている一対の何かがそこから抜けだそうとして身をよじっているようにも思えた。　たぶんこんな写真は焼き捨ててしまうべきなのだろうと僕は思った。しかし僕にはそれを焼くことはできなかった。もし僕にそれを焼き捨てるだけの力があるなら、はじめから......

単語の意味

顳顬・蟀谷（こめかみ）

顳顬・蟀谷・・・頭蓋の側頭部のあたり。耳の上で、目のわき、髪の生え際のところ。この部分には下顎骨につく側頭筋があって、歯をかみしめると動く。米を噛むと動くところ（米噛）だからいう。顳顬（しょうじゅ）。