巨大な蚊帳のような打ちっ放し場のネット

打球はさながら悪魔の背に乗ったように思い通りの位置へ飛んで行く。

夕暮れの闇はずいぶん深くなっていた。柴の上に散らばった白いゴルフ・ボールは籠いっぱいの関節の骨を撒き散らしたみたいに見えた。

（ゴルフがうまい）ハンディなしのゴルフプレーヤー

木の幹と幹の間に緑のネットを張って、ゴルフの練習をしている。クラブがヒュッと空を切ると真ん中の的を目がけてボールが飛んでいく。

ただ山を歩いただけだった。次第に足が重くなり、なのに心はほぐれていく。大勢で歩いていながら、五感は一人、空に向かっていた。不思議な感覚に惑った。だが確かに感じた。子供の頃からずっと消えることなく心に掛かっていた鬱屈の霧が、ふっと晴れる一瞬があったのだ。《…略…》無心。それこそが霧を晴らす瞬間なのだと気づいていた。

山頂が近づくにつれ、木の高さが低くなり、ごつごつとした岩肌が現れだした。

神経を集中したとき、緑色のフェルトの上に無数の道が見えてきた。玉の通って行く、武内にだけ見える道であった。

（真夏の剣道大会）竹刀と竹刀がぶつかり合う音には、会場内に重く沈殿している暑さの塊を、それに付随するもたついた何かを、そのたびに鮮やかに切り裂いてくれるような鋭さがあった。

（飛行船）ツェッペリンは風船玉のように飛んで行ってしまう。