唇を心の出先機関のように考えて、キスを拒む娼婦もいる。

私は自分の舌を伊吹の口の中に差し込んで、洗濯機みたいにぐるぐる回した。私の舌と伊吹の舌が、脱水されてるみたいに、水を流しながら口の中で絡み合って回った。

熱い果実のような唇にディープなキスをする

誰もが溜息をつくようなキス

男の顔が近づき、ごくあっさりと唇が触れた。しかしその瞬間を逃さず、女は舌でからめとった。

夫には刺のある沈黙を貫く

道で交すにはあまりにも丁寧な口づけが、唾液の糸を甘やかに交錯させ、欲望という布地を織り上げる。

二人の仲が恋に発酵する

（会えない子を想う）おまえと訣（わか）れてから、もう六年目になる。人は久しい歳月という。だが、私には永いのだか短いのだか判（わか）らない。あまりに日夜（にちや）思い続ける私とおまえとの間には最早（もは）や直通の心の橋が出来（でき）ていて、歳月も距離も殆（ほとん）ど影響しないように感ぜられる。私たち二人は望みの時、その橋の上で出会うことが出来る。《…略…》永劫（えいごう）の時間と空間は、その橋の下の風のように幽（かす）かに音を立てて吹き過ぎる。

誘惑的な目を向ける