突然に、私は再び泣きたくなってきて、気づいたらもう泣きはじめていた。ほんの五分ほどのことだった。しかし、何が何だかわからなくなるくらい、世界がぐるぐる回るくらい強く泣いた。それは吐くのにそっくりな感じだった。私は息をつめて泣いた。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:5% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
泣き声
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......そういえば、ビクターの犬がいた。私の部屋には置き場所がないので、一階のトイレの置き物にしたのだった。 すわってビクターの犬を、その切ない傾きの角度を見ていたら、突然に、私は再び泣きたくなってきて、気づいたらもう泣きはじめていた。ほんの五分ほどのことだった。しかし、何が何だかわからなくなるくらい、世界がぐるぐる回るくらい強く泣いた。それは吐くのにそっくりな感じだった。私は息をつめて泣いた。いつも酔ったりラリったりしていて喜怒哀楽も薄くなってしまっていた晩年のあの、厚化粧の真由のためにじゃなくて、この世のすべての姉妹の失われた時間のために。 トイレ......
ここに意味を表示
泣き声の表現・描写・類語(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
「声・口調」カテゴリからランダム5
様々な人間がやってきて僕に語りかけ、まるで橋をわたるように音を立てて僕の上を通り過ぎ
村上 春樹 / 風の歌を聴け amazon
話が途切れてしまい、邦彦が何か話すことはないかと考えていると、まち子がぽつんと言った。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
「泣く」カテゴリからランダム5
眼は濡れた椎の実のようにつやつやと光っている
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
(小さい目の)トミ子は涙をこぼした。小さなドブから水が 溢れるように、ジワジワビショビショと涙が溢れた。
向田邦子 / だらだら坂「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
太宰治 / 走れメロス
ふたりは抱き合っておいおい泣いた。床に涙が落ちて、それを冷静に見ている自分もいるのに止まりはしなかった。
よしもとばなな / まぼろしハワイ「まぼろしハワイ」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
声・口調 の表現の一覧
泣く の表現の一覧
感情表現 大カテゴリ
感覚表現 大カテゴリ
人物表現 大カテゴリ