一粒でもしぶきを少なくして、針を突き刺すように入水するために、その瞬間純の手首は二つぴったり重なり合って、揺れる水の壁を突き破ってゆく。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:23% 作品を確認(amazon)
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飛び込み競技
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......どんなに些細な部分でもそれが傷つくことは、わたしを不安にした。「大丈夫? インターハイの予選も近いんでしょ?」「たいしたことないよ。」 純はあっさりと言った。 一粒でもしぶきを少なくして、針を突き刺すように入水するために、その瞬間純の手首は二つぴったり重なり合って、揺れる水の壁を突き破ってゆく。だから純の手首は、わたしが知っている他のどんな手首よりもたくましかった。 その時、奥の廊下からスリッパの音がパタパタと聞こえて、直樹が走ってきた。「純兄ちゃんお......
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一粒でもしぶきを少なくして、針を突き刺すように入水するために、その瞬間純の手首は二つぴったり重なり合って、揺れる水の壁を突き破ってゆく。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
水滴の光に縁取られて、きらきらとくねりながら水に吸い込まれてゆく純の筋肉
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
身体が真直ぐ直角に水を突き抜けて、しぶきがほとんど飛び散らなかった。小さな泡が沸き上がった後、水面はすぐに滑らかになった。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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レーンの右寄りの場所から転がり出したボールは、ガーターの溝と平行に、綱渡りを楽しむかのように、まっすぐ転がった。床を走るボールは、ほどなく、急に肩の力を抜くように、方向を変え、左へと曲がった。 いったん、回転を止めるような素振りを見せると、直線方向へ、つまり、ピンの正面へと、向かった。まるで、そこへのレールが敷かれていたかのように、ボールは一番ピンと二番ピンの間に、吸い込まれる。 弾いた。ボールはピンを飛ばし、自ら弾けた。叫喚するような音が、レーンの先から響いた。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
ジャラジャラ乱れる牌の音が好きだ。時間と体力をたっぷりともてあました大学生の夜を、底からぐしゃぐしゃにかき混ぜてくれる音。それこそ、「今からはじまる」って気がする。
朝井 リョウ / ひーちゃんは線香花火「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(山頂)ようやく山頂に着いた。視界が拓け、俺は思わず、「うわあ」と声を上げた。 草の緑に覆われた、天然の大広間がそこにはあった。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
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