呆れて口を利きたくない

リアリティを失ったような拍子抜けの表情

彼女は男が、娘や私たちを認めて、歩を運び出した刹那（せつな）に、「あたし――」といって、かなりあらわに体を慄（ふる）わして、私の肩に掴（つかま）った。その掴り方は、彼女の指先が私の肩の肉に食い込んで痛いくらいだった。ふだん長い睫毛（まつげ）をかむって煙っている彼女の眼は、切れ目一ぱいに裂け拡（ひろ）がり、白眼の中央に取り残された瞳は、異常なショックで凝ったまま、ぴりぴり顫動（せんどう）していた。口も眼のように竪（たて）に開いていた。小鼻も喘（あえ）いで膨らみ、濃い眉（まゆ）と眉の間の肉を冠（かぶ）る皮膚が、しきりに隆まり歪（ゆが）められ、彼女に堪え切れないほどの感情が、心内に相衝撃するもののように見えた。二三度、陣痛のようにうねりの慄えが強く、彼女の指先から私の肩の肉に噛（か）み込まれ、同時に、彼女から放射する電気のようなものを私は感じた。私は彼女が気が狂ったのではないかと、怖（おそ）れながら肩の痛さに堪えて、彼女の気色を覗（うかが）った。

引きはずされたような、驚いたような顔

只さえ青い顔が見る間に血の気（け）を喪（うしな）って白堊（はくあ）のように光りを失った額のまん中に青筋が二本モリモリと這い出した。憤怒とも驚愕とも形容の出来ない形相（ぎょうそう）

うろたえとまどう

動くことができなくなるほど驚く

みぞおちを打たれたように声も立てられない

〈とりあえず一千万要る〉 　額の多さにうろたえて手で口を覆った。

考え事を喪失する

倉地の手を自分の背中に感じて、電気にでも触れたように驚いて飛びのいた。

本当に驚いて、立ち止まってしまった。

驚いてコーヒーを吹き出す

驚いて、ゼンマイ仕掛けの人形みたいに立ち上がる

ぎょっと驚いて立ちすくむ

驚きのあまり気絶する

全身の血が見る見る心臓へ集中して、消え込んで行くように感じた。

口をすぼめて驚いた顔になった。

相手の驚きを自分の労力の報酬のように感じる

胸の動悸がみるみる高まった。早鐘を撞（つ）くように乱れ撃ち初めた……呼吸が、それに連れて荒くなった。やがて死ぬかと思うほど喘（あえ）ぎ出した。

悲愴な面持ちになる

少女のようにはかなげな笑顔

顔には、何の邪気もない単純さがあるだけ

顔の片側だけゆがめる

猿の奇妙なお面。笑っているようにも、こちらを 威嚇 しているようにも見える。