高速の手前で車の流れは完全に止まっている。

夏休みのせいか、道がひどく混んでおり、ノロノロ運転が続いていた。

道路は自動車がひしめき合い、よたよたと行ったり来たりしている

道路の流れはまだ滞っていた。苛立ったのか、前方の車からクラクションが鳴った。遠吠えに反応する犬のように、別の車からもクラクションが発せられる。

首都高速にびっしりと渋滞した車やトラックの群れを見てそれが毛虫とか芋虫とかいろいろ気持ちの悪いものに見えた。

汽車が尾を引いて木霊する

今にも錆びつきそうなもの哀しい二両編成の郊外電車

（船は）ゆっくりと身をよじるように１８０度の方向転換をしている

窓を閉め切っても絶えず遠くで唸るダンプの騒音

鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える（ヘッドライトに照らされた雨の）曲がりくねった道路

連なった車はどれも甲虫のようにアスファルトを這っている。

狐火のような焔が暗い空からチョロチョロ這い降りて来ては、ぱっと地上に燃えつく焼夷弾

雨で黒く濡れた門柱は荒野に立った２本の墓石のように見える。

ただの箱と化していく部屋を見ていると、それまで呼吸していた部屋が死んでいくようにも思えた。

死は広大な敷地のそれぞれの地面に根を下ろしていた。《…略…》それぞれの名前と時と、そしてそれぞれの過去の生を背負った死は、まるで植物園のかん木の列のように、等間隔を取ってどこまでも続いていた。彼らには風に揺れるざわめきもなく、香りもなく、闇に向ってさしのべるべき触手もなかった。彼らは時を失った樹木のように見えた。彼らは想いも、そしてそれを運ぶ言葉をも持たなかった。彼らは生きつづけるものたちにそれを委ねた。《…略…》海からの潮風、木々の葉の香り、叢のコオロギ、そういった生きつづける世界の哀しみだけがあたりに充ちていた。