本質が見えていない

先入観のない目で佐野さんを見てあげて。トンちゃんの見方、曇ってる。すごく歪んでるよ。

真実を見抜くことができない

勝手に作ったフィルターを通してでしか、彼を理解していなかったのかもしれない。

私はアキヨさんを、常に元彼女だとか、隆大の過去をよく知っているとか、そんな風に嫉妬のフィルターを通してでしか見てこなかった。

混乱を鎮めようと努めていた。頭の中で音がするようだった。組み立てていた仮説が崩れる音だ。

種々さまざまな風説が起こる

勝手に作ったフィルターを通してでしか、彼を理解していなかったのかもしれない。

役人は人民の召使である。用事を弁じさせるために、ある権限を委托した代理人のようなものだ。ところが委任された権力を笠（かさ）に着て毎日事務を処理していると、これは自分が所有している権力で、人民などはこれについて何らの喙（くちばし）を容（い）るる理由がないものだなどと狂ってくる。

（曲解）田村の曲解に、津野も苦笑いを浮かべるしかない。

体内の感受性はまるで点滴を受けたかのように勢いを持って成長している

直感的に「むり」だと思った。「むり」という気持ちが、無意識のうちにすこーんと頭の中で直立していた。茶柱のように不意な直立だったから、逆らう気にもなれなかった。

明るい性格のその奥に、柔らかく傷つきやすい感受性が潜んでるため、直観も秀でている。

普通なだけに、これぞと取り立てて紹介するに足るような雑作（ぞうさく）は一つもない。

（電車内でとじた目をあけると臭いホームレスが甘い香りの女に変っている不思議な体験）「私がこういう姿でも帰りたくない？」 　彼が言った。目を閉じていてもその音の変化ははっきりわかった。ちょうどテープを早回ししたように、そのせりふの途中でぎゅうっと音が高くゆがんだ。空間ごとゆがんだように、頭がくらっとした。そして、その恐ろしい臭気がふっと消え、何か甘い……花のような、ごく薄い香水の 匂いのような香りがじょじょに感じられるようになった。目を閉じているから匂いがよくわかった。それは女の 肌 の匂いと、生花の混じったようなかすかに澄んだ……誘惑にかられて見てしまった。 　そして、心臓が止まりそうになった。 　私の隣にはなぜか女がいた。あわてて両隣の車両を見回したが、人々はまるで異空間にいるように遠く、こちらを見ず、車両と車両の間には透明な壁があるかのように皆さっきまでと同じ疲れた顔で電車に揺られているのだった。何が起こったのだろう、このチェンジはいつの間になされたのだろう、と私は再び女を見た。

金をどぶに捨てるような馬鹿げたまね

久遠は目を天井に向けて、ニュージーランドの牧場の風景を思い浮かべていた。今度は何泊くらいの旅行にしよう。緑の牧草と広大な土地と白い羊たちを思い浮かべる。賢くて愛らしい牧羊犬を思い出し、顔がにやけてしまった。

御法川にとってタバコは執筆モードに入るための起爆剤だった。タバコを口に装填し、導火線に火をつける。大きく煙を吸い込むと、途端に集中力が増してきた。

心の中をひらめき過ぎる断片的な影を葉子は枯れ葉のように払いのけ

僕は感情の持っていき場のないまま、手に持った受話器をしばらく茫然と眺めていた