彼は同じ電車の誰よりも自身を惨めな人間に思わないではいられなかった。とにかく、彼等の血は循環し、眼にも光を持っている。が、自分はどうだろう。自分の血は今ははっきり脈を打って流れている血とは思えなかった。 生温く、ただだらだらと流れ廻る。そして眼は死んだ魚のよう、何の光もなく、白くうじゃじゃけている、そんな感じが自分ながらした。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:41% 作品を確認(amazon)
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惨め・情けない
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......あった。結局ただ一つ、彼が家を出る時から漠然頭にあった、悪い場所だけが気軽に彼の為に戸を開いている、そう思われるのだ。彼の足は自然その方に向うのである。 そして彼は同じ電車の誰よりも自身を惨めな人間に思わないではいられなかった。とにかく、彼等の血は循環し、眼にも光を持っている。が、自分はどうだろう。自分の血は今ははっきり脈を打って流れている血とは思えなかった。生温く、ただだらだらと流れ廻る。そして眼は死んだ魚のよう、何の光もなく、白くうじゃじゃけている、そんな感じが自分ながらした。十四 小さい女は髪結いの処でちょうど解いたところを呼ばれたのだと云って、その沢山ある髪の毛を紅い球のついた髪差で襟首の上に軽く留めて置いた。「朝鮮の女のようでし......
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