するりと皮がむけたように痛みがなくなる

奇跡のように痛みがなくなる

病後の憔悴しきった姿

吻と安心すると、私はもう元気になって、自然に笑い出したくなっている。

病がぬぐうように本復する

笑っている本人の内側で心だけが、貧しくなる。どんどん虫食いに侵されていってしまう。

その詳細を思い出すことができない。ものごとの前後が入り乱れている。無理に思い出そうとすると、身体全体を強くねじられるような感覚があった。まるで上半身と下半身がそれぞれ逆の方向に曲げられているみたいだ。頭の芯が鈍く疼（うず）き、まわりの空気が急速に希薄になっていった。水の中にいる時のように音がくぐもった。今にもあの「発作」が襲ってきそうだ。

ノミに食われたような浅い傷

年とともに舌が荒れたのか、にぶくなったのか、味が濃くないと駄目だった。

（紙で切る）紙できれて指にするどい痛みが走り人差し指の第二関節に細い血の線が浮かび上がる。