僕を不安にしたのは彼の自殺したことよりも僕の東京へ帰る度に必ず火の燃えるのを見たことだった。僕は或 は汽車の中から山を焼いている火を見たり、或は又自動車の中から(その時は妻子とも一しょだった)常磐橋界隈 の火事を見たりしていた。それは彼の家の焼けない前にもおのずから僕に火事のある予感を与えない訣には行かなかった。 「今年は家が火事になるかも知れないぜ」
※備考※ 彼 → 自宅を放火した疑いをかけられて自殺した姉の夫
芥川竜之介 / 歯車 ページ位置:22% 作品を確認(青空文庫)
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胸騒ぎ・嫌な予感
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前後の文章を含んだ引用
......ていた。それもまた実際仕かたはなかった。彼は家の焼ける前に家の価格に二倍する火災保険に加入していた。しかも偽証罪を犯した為に執行猶予中の体になっていた。けれども僕を不安にしたのは彼の自殺したことよりも僕の東京へ帰る度に必ず火の燃えるのを見たことだった。僕は或 は汽車の中から山を焼いている火を見たり、或は又自動車の中から(その時は妻子とも一しょだった)常磐橋界隈 の火事を見たりしていた。それは彼の家の焼けない前にもおのずから僕に火事のある予感を与えない訣には行かなかった。 「今年は家が火事になるかも知れないぜ」 「そんな縁起の悪いことを。……それでも火事になったら大変ですね。保険は碌 についていないし、……」 僕等はそんなことを話し合ったりした。しかし僕の家は焼けずに、―......
単語の意味
燃える(もえる)
燃える・・・1.物に火がつく。燃焼する。
2.気持ちが高ぶる。熱中する。
2.気持ちが高ぶる。熱中する。
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胸騒ぎ・嫌な予感の表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
その日私はいつものようにバイトを終えて、夜家に帰った。 玄関を開けた時、妙な静けさがあった。 それはかすかなもので、それでも普段とは異質の、死の 匂いを感じるような静けさだった。家のなかで何かが終わってしまっているような感じだった。それがあまりにもはっきりと感じられたので、私はこわくなった。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
(死の予感)遠まわしな死の気配が漂っている。静かで緩慢な、しかし逃れようのない死だ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
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「不安」の言葉を含む恐怖の表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
絶望的な不安
宮本百合子 / 伸子
こう思いつくと、まるでそれまで思い設けなかった火の玉のような不安が、身をかわすひまもない速さで、降りかかって来た。
里見 トン / 河豚「初舞台・彼岸花 里見トン作品選 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
高利貸にでも飛び込まれた様に不安な顔付をして
夏目 漱石 / 吾輩は猫である amazon
釣合のとれない不安
芥川龍之介 / 芋粥
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「不安に」 + 「動詞」の表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
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死んだ者同様に意識なく
有島武郎 / 或る女
理性より先に体が恐怖を覚りました。
阿刀田 高 / 縄 ──編集者への手紙──「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
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