TOP > 風景表現 > 晴れ・曇り > 雨上がり・晴れ間がのぞく
天地は薔薇色に明け放たれていて、谷窪の万象は生々の気を盆地一ぱいに薫 らしている。輝 く蒼空をいま漉 き出すように頭上の薄膜 の雲は見る見る剥 れつつあった。 何という新鮮で濃情な草樹の息づかいであろう。緑も樺 も橙 も黄も、その葉の茂みはおのおのその膨らみの中に強い胸を一つずつ蔵していて、溢れる生命に喘いでいるように見える。
岡本かの子 / 金魚撩乱 ページ位置:94% 作品を確認(青空文庫)
この表現が分類されたカテゴリ
雨上がり・晴れ間がのぞく
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......う。復一は精も根も一度に尽き果て、洞窟 のように黒く深まる古池の傍にへたへたと身を崩折らせ、しばらく意識を喪失 していた。 しばらくして復一が意識を恢復 して来ると、天地は薔薇色に明け放たれていて、谷窪の万象は生々の気を盆地一ぱいに薫 らしている。輝 く蒼空をいま漉 き出すように頭上の薄膜 の雲は見る見る剥 れつつあった。 何という新鮮で濃情な草樹の息づかいであろう。緑も樺 も橙 も黄も、その葉の茂みはおのおのその膨らみの中に強い胸を一つずつ蔵していて、溢れる生命に喘いでいるように見える。しどろもどろの叢 は雫の露 をぶるぶる振り払いつつ張って来た乳房 のような俵形にこんもり形を盛り直している。 耳の注意を振り向けるあらゆるところに、潺湲 の音が自由に聴......
単語の意味
薄膜(うすまく・はくまく)
喘ぐ(あえぐ)
蔵する(ぞうする)
燻らす・薫らす(くゆらす)
蒼空(そうくう)
胸(むね)
薄膜・・・薄い膜。コーティング。
喘ぐ・・・1.苦しむように息をする。息を切らす。
2.貧しさや精神的なプレッシャーに苦しんで悩む。
2.貧しさや精神的なプレッシャーに苦しんで悩む。
蔵する・・・1.所蔵する。自分のものとして持つ。
2.内部に持つ。中に含みを持っている。
2.内部に持つ。中に含みを持っている。
燻らす・薫らす・・・ゆっくりと煙を立てる。くゆらせる。
蒼空・・・青空。蒼天。
ここに意味を表示
雨上がり・晴れ間がのぞくの表現・描写・類語(晴れ・曇りのカテゴリ)の一覧 ランダム5
時計が三時を打つころには殆んどの雪が溶けた。地面はしっとりと湿り、夕方近くの太陽が草原をやわらかな光で包みこんでいた。まるで解き放たれたように鳥が鳴き始めた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
気持のいい朝だった。道には小砂利が洗い出され、木や草には水玉がキラキラ光っていた。 薤畑 の 紫 の花が黒い 濡土 とともに大変美しく見えた。遠い空で 雁 の 淡い一列が動いている。
志賀 直哉 / 雨蛙「城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「晴れ・曇り」カテゴリからランダム5
街にさんさんと降る光の中で
よしもとばなな / 銀の月の下で「まぼろしハワイ」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
晴れ・曇り の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ