窓の大きなツインの部屋だった。十八階だったが、視野は二、三百 米 はなれた隣のビルの側面でうめられていた。小さな長方形の窓の群列が風景のすべてだった。しかし、灯りのついた窓と暗い窓のでたらめな散らばりのせいで、無機的な印象は薄かった。むしろ、巨大なものの持つ 愁いのようなものを感じた。
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 ページ位置:30% 作品を確認(amazon)
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見下ろした風景
ビル・建物
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前後の文章を含んだ引用
......それは、そうですが──」 苦笑しかけたが、女は目を伏せたまま真顔で、言葉を低く押し出すようにして続けた。「私も──言葉だけのような思い出では──ありませんの」 窓の大きなツインの部屋だった。十八階だったが、視野は二、三百米はなれた隣のビルの側面でうめられていた。小さな長方形の窓の群列が風景のすべてだった。しかし、灯りのついた窓と暗い窓のでたらめな散らばりのせいで、無機的な印象は薄かった。むしろ、巨大なものの持つ愁いのようなものを感じた。「新宿に毎日来ているのに、こういう景色は、めったに見ないな」 見下ろすと、ホテルの脇のコンクリートの空間を、車が半円を描いて道路へすべり出して行く。 部屋の灯り......
単語の意味
憂い・愁い(うれい)
風景(ふうけい)
憂い・愁い・・・1.心を痛める。心配。(多くの場合、「憂い」を使用)
2.悲しみの気持ち。気が進まない。(多くの場合、「愁い」を使用)
2.悲しみの気持ち。気が進まない。(多くの場合、「愁い」を使用)
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
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見下ろした風景の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
崖の上へ立って下の町を眺めていた。
梶井基次郎 / ある崖上の感情
見下した往来には、無数の人があちこちと、虫のように蠢(うごめ)いていた。
池谷 信三郎 / 橋 amazon
見下ろせば地図のような地表が見える
滝口 悠生 / 死んでいない者 amazon
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ビル・建物の表現・描写・類語(家・建物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
それは地方都市の近郊によく見かける、二階建ての安普請のアパートだった。比較的最近に建てられたものらしいが、既にあちこちで経年劣化が始まっていた。外付けの階段は音を立てて軋み、ドアの建て付けは悪かった。重いトラックが前の道路を通ると、窓ガラスがかたかたと震えた。壁も見るからに薄く、どこかの部屋でベース・ギターの練習でもしたら、建物全体がサウンドボックスになってしまいそうだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
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