薄雲に覆われた青空が紗を透かしたように見える

昨日の雨が嘘のようにやみ、見上げる空は鱗（うろこ）雲を撒き散らしたままからりと晴れる

霞か煙かと間違いそうな淡い雲

さざ波のような雲が太陽を掠めてたなびく

線香の煙のような雲が、透きとおる底の上を静かにのしていったと思ったら、いつしか底の奥に流れ込んで、うすくもやをかけたようになった。

（蒸し暑い夜）風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の温（あたた）かさが、両岸の土からも、川床（かわどこ）の土からも、もやになって立ちのぼるかと思われる夜（よ）

水の辺（ほとり）に立枯れてゐる蓬（よもぎ）の葉を、ゆする程の風もない。

空にはながらく動かないでいる巨（おお）きな雲があった。

ぼくらの前には池が広がっていた。風はない。水面に落ちた木の葉は、そこにぴたりと張りつけられたみたいなかっこうで浮かんでいた。

激しい風は、もうぴったり納まって、ところどころ屑（くず）や葉を吹き溜（た）めた箇所だけに、狼藉（ろうぜき）の痕（あと）を残している。

大きなバラ色の月

月は満月を過ぎて三分の二ほどの大きさになっている

月の輪郭はあくまで鮮やかだが、距離感がつかめない。

遠く青白く流れているような天の川

（都会の夜空）都市の世俗的な明かりが、いつものように星の姿をかき消していた。空はきれいに晴れていたが、いくつかのとくべつに明るい星が、ところどころに淡く散見できるだけだ。しかしそれでも月だけはくっきりと見えた。月は照明にも騒音にも汚染された空気にも苦情ひとつ言わず、律儀にそこに浮かんでいた。目をこらせば、その巨大なクレーターや谷間が作り出す、奇妙な影を認めることもできた。

（脳卒中による手のしびれ）指先に 挾んだ煙草が落ちたのは、そのときである。 　風かな、と思った。 　ふっと風にもってゆかれた、そんな感じだった。

ぼくらの前には池が広がっていた。風はない。水面に落ちた木の葉は、そこにぴたりと張りつけられたみたいなかっこうで浮かんでいた。

水面を渡る風

風が強くて、会話をぼろぼろになった旗のように吹きちぎる

吹きゆく風のささやき