紙ねんどのような味のするロールパン
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置：39% 作品を確認（amazon）
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......。あるいは致死病者を前にした看護婦が一言も口をきけぬまま待ち続けているのかもしれない。 僕は片手で顔を洗っている猫の写真を机の上に放り出したままコーヒーを飲み、紙ねんどのような味のするロールパンを一個だけ食べた。頭は幾分すっきりし始めていたが、手足の先にはまだ熱のしびれが残っていた。僕は机の引き出しから登山ナイフを取り出し、長い時間をかけてＦの鉛筆を六......
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