ダッシュボードに埋め込まれたカーステレオを見た。機械は真っ黒で、つややかに誇らしそうに光っていた。メーカーの名前までは読みとれなかったが、見かけからして高級品であることはわかった。たくさんのつまみがつき、緑色の数字がパネルに上品に浮かび上がっている。

首都高速にびっしりと渋滞した車やトラックの群れを見てそれが毛虫とか芋虫とかいろいろ気持ちの悪いものに見えた。

骨格のしっかりした外車

機銃掃射のような爆発音を轟かすスーパーカー

フロントバンパーがもう少しで前者に接触しそうなほど近づいている

石垣にぴッたりと糊付けか何かのようにくッ付いて、薄暗く油煙に汚れた赤い灯の点いている小さな舟

いろいろな形の発動機船が、白いしぶきをあげて、せっかちな爆音を立てながら忙しげに往復する

船は八日まではふしぎなくらい良好な天候に恵まれました。空は青く晴れ、帆は満足そうに膨れ、飛魚の群れが銀色に光りながら波間をはねるのがいつも見えました。

はじめはブレーキ音だった。アスファルトをタイヤが滑った。ずいぶん長い間タイヤが鳴っている気がした。助手席の京子の身体が勢いよく浮いた。 　そして、どん、と衝突音がした。なすすべもない。バンパーが潰れる感触があった。 　シートベルトが肩に食い込む。浮いた身体はバウンドして、座席に跳ね返った。 　あっという間のことだった。頭の中が揺れる。突然の痛みと驚きに、怒りが瞬時に湧いた。気を失うほどではなかったが、京子は言葉も出なかった。 　しばらくしてから、ようやく運転席の青山の様子が気になる。

生ぬるい嵐の風を巻いて、青いポルシェが地下スロープに滑りこんできた。