(冬のハエ)日蔭ではよぼよぼとしている彼らは日なたのなかへ下りて来るやよみがえったように活気づく。《…略…》彼らを見ていると彼らがどんなに日光を恰 しんでいるかが憐 れなほど理解される。とにかく彼らが嬉戯 するような表情をするのは日なたのなかばかりである。《…略…》日なたのなかから一歩も出ようとはしない。日が翳 るまで、移ってゆく日なたのなかで遊んでいるのである。
梶井基次郎 / 冬の蠅 ページ位置:7% 作品を確認(青空文庫)
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前後の文章を含んだ引用
......のなかで半裸体の身体を晒 しながら、そうした内湾 のように賑やかな溪の空を眺めている。すると彼らがやって来るのである。彼らのやって来るのは私の部屋の天井からである。日蔭ではよぼよぼとしている彼らは日なたのなかへ下りて来るやよみがえったように活気づく。私の脛 へひやりととまったり、両脚を挙げて腋の下を掻 くような模 ねをしたり手を摩 りあわせたり、かと思うと弱よわしく飛び立っては絡み合ったりするのである。そうした彼らを見ていると彼らがどんなに日光を恰 しんでいるかが憐 れなほど理解される。とにかく彼らが嬉戯 するような表情をするのは日なたのなかばかりである。それに彼らは窓が明いている間は日なたのなかから一歩も出ようとはしない。日が翳 るまで、移ってゆく日なたのなかで遊んでいるのである。虻や蜂があんなにも溌剌 と飛び廻っている外気のなかへも決して飛び立とうとはせず、なぜか病人である私を模 ねている。しかしなんという「生きんとする意志」であろう! 彼......
単語の意味
日光(にっこう)
日光・・・日の光。大陽光線。
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両脚を挙げて腋の下を掻 くような模 ねをしたり手を摩 りあわせたり
梶井基次郎 / 冬の蠅
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こんなにふしぎな蝶を見たことはなかった。 弓弦 のように引きしぼった大きな羽も、ゆたかに柔らかく 膨らんだその腹部も全身、銀色なのである。ただ二本の触覚だけが絹糸のように白かった。それはなぜか、ぼくは若い 踊子 を──頭に白い羽毛をつけ、銀粉を全身にぬって片脚をかるく上げて、今、空中に飛び上ろうとする美しい踊子を想わせた。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
そのとき、耳元で 藪蚊 の羽音がした。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
拳でどんと叩くと、木の葉のようにぱらりと落ちて
川端 康成 / 雪国 amazon
あぶら蝉 、みんみん蝉、日光山がジイ――ッと啼いているようだ。
吉川英治 / 無宿人国記
杉林の前には、数知れぬ蜻蛉の群が流れていた。たんぽぽの綿毛が飛んでいるようだった。
川端 康成 / 雪国 amazon
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