電球は全部切れたままで、学生寮の隅々にまで夜がなだれ込んでいた。掌のべとべとも汚れたスリッパも気にせず、夜を押しやりながら寮の中を走った。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 ページ位置:95% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
暗い・闇
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......、ため息をつくようにうつむき微笑む彼に、たまらなく会いたかった。早く彼を探さなければ、と強く思った。 わたしは手探りで先生の部屋を出ると、階段を走って上がった。電球は全部切れたままで、学生寮の隅々にまで夜がなだれ込んでいた。掌のべとべとも汚れたスリッパも気にせず、夜を押しやりながら寮の中を走った。胸がどきどきし息が切れたが、それでも耳の奥の羽音は乱れずに響いていた。 いとこの部屋には鍵が掛かっていた。ノブを両手で握り、回したり、押したり、引いたり、考えつ......
単語の意味
手の平・掌(てのひら)
手の平・掌・・・手首から先の、物を握ったときに内側になる面。掌(たなごころ)。
ここに意味を表示
暗い・闇の表現・描写・類語(光と影のカテゴリ)の一覧 ランダム5
赤い鳥居が闇の中で夢のように暗く見えた。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
川端康成 / 雪国 amazon
海の底と錯覚しそうな深い闇を見つめていた。じっと息を殺していると、闇がか細く震えているのが分った。闇の粒子が、怯えるように宙でぶつかり合っていた。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「光と影」カテゴリからランダム5
同じカテゴリの表現一覧
光と影 の表現の一覧
感覚表現 大カテゴリ