現在の日本の洋画家には天分というものが全くない。彼らは徒らに乏しい才能を濫作によって摺りへらしているのであり、その才能もせいぜい他の森林から落葉を搔き集めて運んでいるような借りものである。 しかし、小坂田二郎は、そうした才能の森林の奥深いところにどっしりと構えていて、みずからの若葉を尽きるところなくつみ取っている天才的画家である。
松本 清張 / 美の虚像「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 ページ位置:37% 作品を確認(amazon)
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天才・秀才
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前後の文章を含んだ引用
......小坂田二郎は、そういう苦労なしに一挙に躍り出たのだった。 事実、遠屋則武は小坂田二郎の画才について何度か新聞や雑誌に書いている。要約すればこういうことである。「現在の日本の洋画家には天分というものが全くない。彼らは徒らに乏しい才能を濫作によって摺りへらしているのであり、その才能もせいぜい他の森林から落葉を搔き集めて運んでいるような借りものである。 しかし、小坂田二郎は、そうした才能の森林の奥深いところにどっしりと構えていて、みずからの若葉を尽きるところなくつみ取っている天才的画家である。このまま彼が進めば、ゆうに世界的な画家に伍すだろう。いや、あるいは、すでにその入口にさしかかっているかもしれない」 洋画評壇の「神様」の絶讃であった。 小坂田二......
単語の意味
徒(あだ)
若葉(わかば)
徒・・・働きかけたのに、期待はずれに効果がないさま。役に立たないさま。むだ。
若葉・・・芽を出したばかりの葉。とくに、初夏の木々のみずみずしい葉。新葉(しんば)。
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彼は単に才能に恵まれただけでなく、数ある才能の中でも、特に 良いもの に当たったのだった。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
彼は、神様が戯れに折って投げた紙ひこうきみたいな才能ね。空の高いところに、ある時、突然現れて、そのまますーっと、まっすぐに飛び続けて、いつまで経っても落ちてこない。……その軌跡自体が美しい。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
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いきなり傑作をひっさげて闇の中からぬっと登場する天才
池澤 夏樹 / シネ・シティー鳥瞰図 amazon
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