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長いあいだ目をつむっていると、まるで自分が微妙なバランスをとりながら不安定な空間に浮かんでいるような気がした。たぶんそれはやわらかいベッドの上に裸で寝転んでいるせいだろう。それから女のつけたオーデコロンの強い匂いのせいもあるかもしれない。その匂いはまるで微妙な羽虫のように僕の暗闇の中にもぐりこんで、僕の細胞を伸ばしたり縮めたりしていた。
村上春樹 / 双子と沈んだ大陸「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 ページ位置:70% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......るのか? どこに行くことになるのか? しかし僕にはひとつとしてその答を思いつくことはできなかった。2「いつも同じ夢を見るんだ」と僕は目を閉じたまま女に言った。 長いあいだ目をつむっていると、まるで自分が微妙なバランスをとりながら不安定な空間に浮かんでいるような気がした。たぶんそれはやわらかいベッドの上に裸で寝転んでいるせいだろう。それから女のつけたオーデコロンの強い匂いのせいもあるかもしれない。その匂いはまるで微妙な羽虫のように僕の暗闇の中にもぐりこんで、僕の細胞を伸ばしたり縮めたりしていた。「その夢を見る時間はいつもだいたい決まっている。朝の四時か五時──明け方の少し前だね。ぐっしょりと汗をかいてとび起きると、まだあたりは暗い。でもまったく暗いとい......
単語の意味
暗闇(くらやみ)
暗闇・・・1.暗い闇。光がなくて見えない状態。また、そういう場所。
2.人目につかない場所。人の知らない場所。
3.1が転じて、希望がもてないこと。見通しが立たず将来に不安を感じている状態。
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