私は内心びくびくしていた。《…略…》より本能的な、卑小感だった。明らかに自分より強大なものに出会った野生動物が無条件に抱くであろう、逃走への欲求のような。

その帽子によって、鳥飼重太郎なる人物が、いっそう、精彩を加えたよう

全体からかもしだされる生命力の揺れみたいな鮮やかな光──人間じゃないみたいだった。こんな人見たことない。《…略…》よくよく見れば確かに歳相応のしわとか、少し悪い歯並びとか、ちゃんと人間らしい部分を感じた。それでも彼女は圧倒的だった。もう一回会いたいと思わせた。心の中にあたたかい光が残像みたいにそっと輝いて、これが魅力っていうものなんだわ、と私は感じていた。初めて水っていうものがわかったヘレンみたいに、言葉が生きた姿で目の前に新鮮にはじけた。大げさなんじゃなくて、それほど驚いた出会いだったのだ。

若いのにでっぷり太ってすっかり 貫禄 をつけた軍曹

全身に異様な空気を漂わせていました。筑波航空隊には戦地から帰った搭乗員が何人かいて、いずれも死線を越えたという 凄みがありました

なにか悪霊にでも取り付かれているような凄まじさ

（垢抜けない）田舎育ちのせいもあって、日頃見慣れている都会の女たちに比べれば、いくぶん垢抜けの薄いうらみはあった

群集は、小学生が使ったケシ護膜（ごむ）の痕のように、まだ、小汚なく、十字路 のあちこちに落ち散っていた。

店内はむせ返るようであった。

ネコの死骸そのものより、誰かが殺したという事実が怖い。そこにある意思や感覚が怖い。