異臭に満ちた部屋

ぷんと木の香がこもっている

（雨の店内）安酒のにおい、汗のにおい、食料脂のにおい、――、そういうものが雨で立籠められたうえ、靴の底から蹴上げられる埃と煙草の煙に混（まじ）り合って部屋の中の空気を重く濁した。

香りがあたりに揺動する

部屋へ帰ると窓近い樫（かし）の木の花が重い匂いを部屋中にみなぎらせていました。

花びらの薫りの中に、自分の首がすっかり埋まってしまったような夢心地

パンが焼ける 匂いはなぜだろう、恐ろしいほど幸福な感じがする。

香り高い

人の心を誘い込むようないい香り

陽をたっぷり吸い込んであたたかい匂いをたてている

久しぶりに食べる鯵の塩焼きは感動的に美味しかった。何しろ匂いがいい。煙が鼻の穴から脳の奥へとつうんとしみわたっていくのがわかる。

風味が細やか

胃を刺激するいい香り

食欲を刺激する

口の中に唾液が溜まってくるようなあたたかい香り。

店の中には煙草とウィスキーとフライド・ポテトと腋の下と下水の匂いが、バウムクーヘンのようにきちんと重なりあって淀んでいる。

雨上がりを連想させるしっとりした香り

彼女の感覚に新鮮な一種の匂いがその辺に滲みついていた。家具の艶出液（つやだしえき）のにおい、煙草、羊毛ともう一つ何か乾いた皮製のものから立つようなにおいが皆一つに溶けこんだ、男ばかりの住居らしい匂いだ。

家じゅうに香ばしいパンの香りが漂い、暖かい雰囲気をそこに作りあげた。

古い忍従と知性の結晶が徐々に崩壊していくときの嘆息のような香り

（ガーリックトースト）焼き上ったトーストに、にんにくを半分に切り、その切り口をごしごしとなすりつけてから、バタをぬれば、ガーリックトーストができる。

パンを引き裂いていくとき、それまで内部にこもっていた湯気が嬉しそうに出ていくのを暖かく見守ってやる

こんがりきつね色に焼けてアツアツのカリカリで、だけど内部はフワフワのモコモコ。押すと、よく干して膨れ上がった布団のように押し返してくる。

いいぱんだろう。ほしぶどうがちょっと顔（かお）をだしてるだろう。

茶褐色で、トゲトゲしていて、しつこそうで、油っぽくて、一癖も二癖もありそうな問題児的イメージのカレーパン。異端を少しも恐れない確信犯的風貌。

香草の芳しさ

げっとなるような重苦しい悪臭

ふいに強烈な家畜の臭いがした。峠の澄んだ冷たい夜気に、とつぜん混じった獣の臭気は、まるでクラゲのように祐一の鼻を噛んだ。

煙草の匂いが、まだ微かに、香のように、立ちこめているような気がした。

ほろ苦い香り

コロッケパンの特長は、コロッケの柔らかさがパンの柔らかさ同調しているところにある。コロッケパンの同類にハムカツサンドがあるが、ハムカツはパンと同調しない。噛んでいくと、ハムカツのところで歯の動きがいったん止まる。コロッケパンは、噛んでいくといつのまにか歯がコロッケを通過している。そして、口の中がいつのまにかパンとコロッケとソースが混じりあった味になる。混じりあった瞬間、なんだかとても楽しい気分になる。

ハムを使ったサンドイッチを作るときはマスタードをたっぷり使う。独特の酸味が肉の味を引き締めおいしさが増す。

（餅は、）沼へでも落ちた人が足を抜こうと焦慮（あせ）る度にぶくぶく深く沈む様に、噛めば噛む程口が重くなる。

表面がさっぱり、中がねっとりした揚げ餅はポン酢がよく合う。油臭さが消えて実に豊かで爽やかな味だ。

（フランスパン）焦茶色で絞り手拭（てぬぐい）の形をしているパンは、フランス独得の流儀で、皿にのせず、畳んだナフキンの上にじかに置いてあった。