メインストリートが真直ぐにのびていて、両側は銀杏並木の黄色でいっぱいだった。風が吹くといっせいに木々が揺れて、葉っぱがぱらぱらと斜めに落ちていった。空の青さの中で、一枚一枚の黄色の輪郭がくっきりと浮かび上がった。その黄色は、地面に落ちてくるまでの間に陽を浴びて何度も光った。

風が枯葉を掃ってしまったあとは風の音も変わっていった。

足の下に、枯らしてしまった福寿草の鉢があった。うぐいす色の 縦 皺 を寄せて立ち枯れた正月の花は、口をあけたまま死んだカナリヤの 雛 に見えた。

落ち葉の雨がしきりに降り注ぐ

庭下駄（にわげた）に踏まれた落ち葉はかわいた音をたてて微塵（みじん）に押しひしゃがれた。豊満のさびしさというようなものが空気の中にしんみりと漂っていた。

庭下駄（にわげた）に踏まれた落ち葉はかわいた音をたてて微塵（みじん）に押しひしゃがれた。豊満のさびしさというようなものが空気の中にしんみりと漂っていた。

踏むたびに、くしゃりと、葉っぱが粉になる音がした。

秋刀魚（さんま）を焼く匂いは季節の呼び声だ。

根方に松葉が落ちていた。その上を蟻（あり）が清らかに匍（は）っていた。

背を刺すような日表（ひなた）は、蔭となるとさすが秋の冷たさが跼（くぐま）っていた。