陽のさしている明るい教室で熟睡すると、はっと目覚めたとき一瞬どこにいるのかわからない。さっきフェードアウトしていったのとまったく同じ音量で話し続ける教師の声に気づく。

夢をはらんだ仮睡

夏服の白いシャツに浮き出ているふたつの肩甲骨が、大地の寝息のリズムに合わせて上下している。

草に寝転んでいると、躯ごと土の中へ持ってゆかれそうだ。

30 分ばかりそこに横になって、少しだけうとうとと眠ったが、そのあいだビーチをおとずれる人間はひとりもいなかった。そのうちにぼくは不思議なくらいしんとした気持ちになってきた。その浜辺はひとりぼっちで訪れるにはあまりにも静かであり、あまりにも美しすぎた。そこにはある種の死に方を想い起こさせるものがあった。

あれ、と思った時にはアスファルトに座り込んでいた。頭がぐんと重くなり、顔の筋肉が弛んだ。瞼が閉じてくる。夜空の藍色と杉林の黒が混じり、車道の無機質な灰色と合わさったかと思うと頭がその色で染まる。

無理に起こそうとすると、頭上のハエを追い払うように両手を振り回し、顔をしかめて嫌そうな声を上げる

潮騒を聴きながら海に抱かれて眠る

ほの暗い灯りとやわらかい音楽が徹夜つづきの連日のおびただしい疲労を溶かしてくれるようだった

疲れ切って夜中の寝床に横わりながらでも闇の中に爛々（らんらん）と光る眼を閉じることが出来なかった。