カーテンの閉じ目から差し込む朝日

烈しい秋の日が、六尺の障子（しょうじ）へ一面にあたって

窓のカーテンを数センチ引いた。淡い水のように月光が部屋の中に忍び込んできた。

午後四時をまだ過ぎたばかりなのに大部屋の中はうす暗く、ミツ人名は窓から洩れる僅かな微光を探しながら本の頁をめくった。

夏の月光が洪水のように蚊帳の中に満ちあふれた。

薄暗い店内は淡く流れる音楽とざわめきに満ちていた。

辺りを気にするみたいに遠慮がちにドアノックする

高原の部屋は、相変わらず簡素だった。まるで誰も住んでなかったように、人間の気配がない。家具達が、人間との関わりを拒絶し、冷えて沈黙してるみたいに。

この惨状は異様だ。正気のタガがはずれてしまったとしか思えない。誰かが大慌てで逃げ去った後のように荒涼としている。 　夏物も冬物も下着類もソックスも、少ない手持ちの衣料のおおかたが、畳やベッドや机の上に撒き散らされていて足の踏み場もない。そのどれもが脂じみ、薄汚れている。 　椅子の足元に、灰皿がひっくりかえって大量の吸殻が散乱している。ところかまわず転がっているビールの空き缶の幾つかにも、捻じくれた吸殻がぎっしり詰め込まれている。山積みの屑入れのまわりに、さらに山になって菓子パンの袋や丸めたティッシュペーパー、真っ黒になったバナナの皮などが折り重なっている。

屋敷では門を厳重に鎖（とざ）して静まりかえっていた。

静かな蒼空は、澄んで、幅広い白金のような日光を漲らして

雨が上がり月が雲の切れ間に見えてもなお、雨の匂いを残したままの街は夕暮れとはまた違った妙に艶のある表情を浮かべ

烈日に屋根が漆器のように輝く

夏を先取りしたような強い陽射し

直射光線には偏頗（へんぱ）があり、一つの物象の色をその周囲の色との正しい階調から破ってしまうのである。