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何をしていいのか見当もつかない。いつまでも壁を睨んでるわけにもいくまい、と自分に言いきかせる。それでも駄目だった。卒論の指導教授がうまいことを言う。文章はいい、論旨も明確だ、だがテーマがない、と。実にそんな具合だった。久し振りに一人になってみると、自分自身をどう扱えばいいのかが上手く把めなかった。《…略…》まるで捜し物の最中に、何を捜していたのかを忘れてしまったような気分だった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:45% 作品を確認(amazon)
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......やりと煙草を吸った。いろんなことを考えてみようとしたが、頭の中で何ひとつ形をなさなかった。僕はため息をついてベッドに起き上がり、しばらく向い側の白い壁を睨んだ。何をしていいのか見当もつかない。いつまでも壁を睨んでるわけにもいくまい、と自分に言いきかせる。それでも駄目だった。卒論の指導教授がうまいことを言う。文章はいい、論旨も明確だ、だがテーマがない、と。実にそんな具合だった。久し振りに一人になってみると、自分自身をどう扱えばいいのかが上手く把めなかった。 不思議なことだ。何年も何年も僕は一人で生きてきた。結構上手くやってきたじゃないか、それが思い出せなかった。二十四年間、すぐに忘れてしまえるほど短かい年月じゃない。まるで捜し物の最中に、何を捜していたのかを忘れてしまったような気分だった。いったい何を捜していたのだろう? 栓抜き、古い手紙、領収書、耳かき? あきらめて枕もとのカントを手に取った時、本のあいだからメモ用紙がこぼれた。双子の字だった。......
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