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何をしていいのか見当もつかない。いつまでも壁を睨んでるわけにもいくまい、と自分に言いきかせる。それでも駄目だった。卒論の指導教授がうまいことを言う。文章はいい、論旨も明確だ、だがテーマがない、と。実にそんな具合だった。久し振りに一人になってみると、自分自身をどう扱えばいいのかが上手く把めなかった。《…略…》まるで捜し物の最中に、何を捜していたのかを忘れてしまったような気分だった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:45% 作品を確認(amazon)
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暇・時間を持て余す
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前後の文章を含んだ引用
......やりと煙草を吸った。いろんなことを考えてみようとしたが、頭の中で何ひとつ形をなさなかった。僕はため息をついてベッドに起き上がり、しばらく向い側の白い壁を睨んだ。何をしていいのか見当もつかない。いつまでも壁を睨んでるわけにもいくまい、と自分に言いきかせる。それでも駄目だった。卒論の指導教授がうまいことを言う。文章はいい、論旨も明確だ、だがテーマがない、と。実にそんな具合だった。久し振りに一人になってみると、自分自身をどう扱えばいいのかが上手く把めなかった。 不思議なことだ。何年も何年も僕は一人で生きてきた。結構上手くやってきたじゃないか、それが思い出せなかった。二十四年間、すぐに忘れてしまえるほど短かい年月じゃない。まるで捜し物の最中に、何を捜していたのかを忘れてしまったような気分だった。いったい何を捜していたのだろう? 栓抜き、古い手紙、領収書、耳かき? あきらめて枕もとのカントを手に取った時、本のあいだからメモ用紙がこぼれた。双子の字だった。......
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貸ビルが建っていて、屋上には電気冷蔵庫の巨大な広告パネルが取り付けられていた。エプロンをつけた30歳ばかりのいかにも貧血症といった感じの女が前かがみになって、それでも楽しそうにドアを開けているおかげで、僕は冷蔵庫の中身をのぞき見ることができた。 フリーザーには氷と1リットル入りのバニラ・アイスクリーム、冷凍海老のパック、二段めには卵のケースとバターにカマンベール・チーズ、ボーンレス・ハム、三段めには魚と鶏のもも肉、一番下のプラスチック・ケースにはトマト、キュウリ、アスパラガス、レタスにグレープフルーツ、ドアにはコカ・コーラとビールの大瓶が3本ずつ、それに牛乳のパックが入っていた。 僕は彼女を待つ間、ハンドルにもたれかかったまま冷蔵庫の中身を平らげる順番をずっと考えてみたが、何れにせよ1リットルのアイスクリームはいかにも多すぎたし、ドレッシングの無いのは致命的だった。
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
夏休みが重くのしかかってくることになる。暇すぎるせいで夏休みが苦痛に変わるあのやるせない気持ち。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
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