愛なんかくそくらえだ、と言う柿村の言葉は、愛なくしては生きられない、という人間の反語なのだ。

雨晴れて簑（みの）を脱ぎ、水尽きて舟を棄つるような気分で女に別れて

（失恋を乗り越える）自分もまた、野呂を烈しく愛したという事実を思い出すことをやめてはいない。 　野呂以外の男を愛する時が訪れて初めて、野呂との記憶を箱の中に納め、繰り返し覗き見ることをしなくて済むようになるのだろう。それは半年後のことなのかもしれない。三か月後かもしれない。いや、明日かもしれないし、永遠にそんな時は訪れてくれないのかもしれない。

元カレを偶然見かけて胸に懐かしい痛みが走る

別れた男が、魚が生まれた川へ帰ってくるように戻ってくる

愛撫ではなく手厚い治療を受けているという感覚。

恋の予感めいたものが胸にある

少しく心の力が必要な所へくると話がゆきつまってしまう

肥っていた躰もすっきりと細くなり、好きな相手もできたのだろう。

彼女は天吾の勃起していないペニスを、眠り込んだペットを扱うみたいに手のひらに載せて、その重さを量りながら