舟に辛口の熱燗をつめた魔法瓶と辛子酢味噌のどんぶり鉢をのせて湖に繰りだし、少し膚寒い朝風のなかで、網からあげたてのピチピチ跳ねる白魚を茶漉しでしゃくってどんぶり鉢へあける。白魚は辛子酢味噌のなかでは跳ねない。ふれたとたんに一瞬でおとなしくなってしまう。透明な「一寸」の体に黒い眼をまじまじ瞠ったまま息絶える。それをつるつるとすするのだが、コリコリした歯あたりと、ほのかなホロ苦みであるきりで、生臭さも、肉らしい味も、何もなかったと記憶している。

黒ゴマの粒を一つ置いたような愛らしい白魚の目。食べてしまう己が憎らしいとさえ感じる。

白魚は椀ダネにするのが一番。あっさりとした絹ごしの豆腐に付け合せて、吸い口には新海苔をもんでかけると、白魚の姿が生きてくる。

沖で獲れた白魚は平たい籠に盛られていて、小さな細い透明な体から籠の目が透き通って見えるほど

白魚は一見、中華料理の羹のように、雑然として、かつ、トロトロしている。

きらきらと虹色を持った美しい曲線を描く魚体

名前の通り、空を飛ぶ魚、トビウオ。飛距離は時に４００メートルにも及び、その激しい運動のため体は引き締まっており、脂質は極めて少ない。青背の魚でありながら平均的な白身魚より下回る。

缶詰のサンマは、皮を箸でこするとズルズルと剥がれる。ここは脂肪があってトロトロしている。お腹の部分を口の中に入れると、ビロビロととろける。

（鯖の味噌煮）いかにも下町らしい下手な味をもっている

ガラスの小鉢に盛られたハモの白身がいかにも涼しげ