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(寝ているときに首を絞められた感覚)喉がとても苦しい。熱い塊にふさがれて息を吸うことも吐くこともできない。それは、もうそこに、すぐそばに来ている。耐えきれなくなって口を開いた途端、ふっと蝋燭が消え、じぃっと待ち構えていたものが逆流する叫びのように肺になだれ込んでくる。さっきまで十和子の身体だった空っぽの通路のなかで、叫びが叫びと、闇が闇と、風が風とつながる。すると新たに生み出された、叫びでも闇でも風でもない 獰猛 な力が、無数の翼を持つ砂嵐になってまっしぐらに身体を吹き抜けていく。《…略…》喉首のあたりに熱感がわだかまっている。眠っている間に、陣治がそこに手をかけていたような気がしてならない。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:41% 作品を確認(amazon)
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息苦しい・呼吸ができない
首を絞める・絞殺
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前後の文章を含んだ引用
......、夢見ても夢見ても思い出せない血の色の花の名。〈十和子――〉 そのものが呼ぶ。風が呼ぶ。 身を隠すためにむしろもっと小さくなりたいと念じる。〈十和子――〉 だが喉がとても苦しい。熱い塊にふさがれて息を吸うことも吐くこともできない。それは、もうそこに、すぐそばに来ている。耐えきれなくなって口を開いた途端、ふっと蝋燭が消え、じぃっと待ち構えていたものが逆流する叫びのように肺になだれ込んでくる。さっきまで十和子の身体だった空っぽの通路のなかで、叫びが叫びと、闇が闇と、風が風とつながる。すると新たに生み出された、叫びでも闇でも風でもない獰猛な力が、無数の翼を持つ砂嵐になってまっしぐらに身体を吹き抜けていく。「十和子――」 目を開くといつのまにか夜が明けかけている。「どないした、夢見たんか」 薄闇のなかに陣治がすわって、かたわらから顔をのぞき込んでいる。「おっきい声......<中略>......したん。声出えへんのか。さっきはあんなえらい声で叫んでたのに」そっと上掛けを剥ぐ。「まるで、あのときの声みたいやったで。背中撫でたろ、また声出るようにしたろ」 喉首のあたりに熱感がわだかまっている。眠っている間に、陣治がそこに手をかけていたような気がしてならない。その手が再び伸びてきて肩に触れるのに、身動きができない。「さあ、うつ伏せになってみ」 そう言いながら、無理にうつ伏せにするでもなくパジャマのなかに手を入れて、横......
単語の意味
蟠る(わだかまる)
熱い(あつい)
獰猛(どうもう)
身体(しんたい)
叫ぶ・号ぶ(さけぶ)
蟠る・・・心配や不満などの気持ちで、心の中がスッキリしない。心の中がモヤモヤしてる。
熱い・・・1.温度が高いと感じる。
2.気持ちが高まった状態である。関心を寄せている。「今B級グルメが熱い」
2.気持ちが高まった状態である。関心を寄せている。「今B級グルメが熱い」
獰猛・・・乱暴な性格で、周りに危害を加えそうなさま。
身体・・・人のからだ。肉体。
叫ぶ・号ぶ・・・1.何かを訴えるために、大きな声を出す。大声を発する。大声で言う。
2.世間に向かって強く主張する。強く訴える。
2.世間に向かって強く主張する。強く訴える。
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息苦しい・呼吸ができないの表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
彼は息苦しくなり、片手でネクタイを緩めた。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
呼吸がおかしくなったときにはポリ袋を口に当てるように教えられた。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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首を絞める・絞殺の表現・描写・類語(動作・仕草・クセのカテゴリ)の一覧 ランダム5
まずこちらの話を聞いてくれ、と。しかし声は出てこなかった。声帯を震わせるだけの空気がそこにはもうなかったし、舌も喉の奥で石のように固まったままだ。気管は今では隙間なく塞がれていた。空気は一切入ってこない。肺は新鮮な酸素を死にものぐるいで求めていたが、そんなものはどこにも見当たらない。身体と意識が分割されていく感覚があった。身体が寝袋の中でのたうち続けている一方、彼の意識はどろりとした重い空気の層に引きずり込まれていった。両手と両足が急速に感覚を失っていった。なぜだと彼は薄れていく意識の中で問いかけた。なぜ俺がこんなみっともないところで、こんなみっともない格好で死んでいかなくてはならないんだ。もちろん答えはない。やがて辺縁を持たぬ暗闇が天井から降りて、すべてを包んだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
声を立てないのは、死んでいるのではなく、強く首の根を締めあげられているからで
吉川英治 / 八寒道中
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「動作・仕草・クセ」カテゴリからランダム5
両手でコップを包み込むようにしながらウィスキーを飲んでいる
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
わが意を得たりというように大きく頷いてみせる
内田 康夫 / 釧路湿原殺人事件 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
彼女の魂は、おそらくはしかるべき段階を経て、 70 年間連れ添った古巣の身体を永遠に離れてしまった
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
ネグリジェの中の体は冷えた粘土のように堅く、重かった。
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
早く刺されたいと、十和子の手で解放されたいと、心待ちにしている
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
「恐怖・不安」カテゴリからランダム5
正体を知覚できない不安がチカチカとサインを送っているようであった。
阿刀田 高 / 裏側「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
「その他の気分」カテゴリからランダム5
思いきり立ち上がると、右目と左目の真ん中あたり、頭の芯がくらっとバランスを失った。
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon
まるで自信がなくなってしまう。ごみくずのような気がして来る。
林芙美子 / 新版 放浪記
始めた時にはぱんぱんにみなぎっていたあの自信は、もうすっかりしぼんでいる。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
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