宗谷海峡に入った時は、三千噸 に近いこの船が、しゃっくりにでも取りつかれたように、ギク、シャクし出した。何か素晴しい力でグイと持ち上げられる。船が一瞬間宙に浮かぶ。――が、ぐウと元の位置に沈む。エレヴエターで下りる瞬間の、小便がもれそうになる、くすぐったい不快さをその度 に感じた。雑夫は黄色になえて、船酔らしく眼だけとんがらせて、ゲエ、ゲエしていた。
小林多喜二 / 蟹工船 ページ位置:11% 作品を確認(青空文庫)
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嵐の中の船
乗り物酔い
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前後の文章を含んだ引用
......りが出て来て、そして又それが細かく、せわしなくなった。――風がマストに当ると不吉に鳴った。鋲 がゆるみでもするように、ギイギイと船の何処かが、しきりなしにきしんだ。宗谷海峡に入った時は、三千噸 に近いこの船が、しゃっくりにでも取りつかれたように、ギク、シャクし出した。何か素晴しい力でグイと持ち上げられる。船が一瞬間宙に浮かぶ。――が、ぐウと元の位置に沈む。エレヴエターで下りる瞬間の、小便がもれそうになる、くすぐったい不快さをその度 に感じた。雑夫は黄色になえて、船酔らしく眼だけとんがらせて、ゲエ、ゲエしていた。 波のしぶきで曇った円るい舷窓 から、ひょいひょいと樺太 の、雪のある山並の堅い線が見えた。然 しすぐそれはガラスの外へ、アルプスの氷山のようにモリモリとむくれ上っ......
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波の背 に乗って四十五度くらいの角度に船首を下に向けながら、帆をいっぱいに開いて、矢よりも早く走って行く一艘 の船!
有島武郎 / 生まれいずる悩み
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船酔と過労で、ゲッソリやせた
小林多喜二 / 蟹工船
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山のように荷物を積み上げた荷車を、黙って汗をかきながらひっぱっている馬
小沼 丹 / 小さな手袋 amazon
線路の上に重しのようにずしりと止まる機関車
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
八つ当たりのようにエンジンを空ぶかしさせる
中上 健次 / 枯木灘 amazon
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神秘な生命力を流し込まれるかのように、見る見る元気になる
川端 康成 / 掌の小説 amazon
「水面・水中・水辺」カテゴリからランダム5
鷗はちぎれ雲のようにマストにひっかかって飛ぶ。
サトウ ハチロー / 夢多き街―抒情詩と随筆 (1947年) amazon
クサリのように点々、黒くつながっている渚の岩
山本 有三 / 波 amazon
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みしみしと細かく家のきしむ音がしたかと思うと、部屋が揺れ始めた。
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
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