(水死体のイメージ)わたしは本物の水死体を見たことがなかった。だから、思い切りグロテスクな水死体を想像することができた。皮膚はゼリーのようにふくらんで、さわるとぬめりがあり、半開きの口から覗く舌は、黴が生えたみたいに黒ずんでぐったりしていて、髪にしみ込んだ海のにおいは、胃液のにおいと区別がつかなくなって……
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:14% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
死人・遺体
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......水死体。海藻や波頭の白い泡や貝殻のくっついた死体だ。そして同じこの夜のどこかに、彼と一緒に死んだ女の死体も横たわっている。塩水に濡れた髪の毛や唇やふくらはぎ。 わたしは本物の水死体を見たことがなかった。だから、思い切りグロテスクな水死体を想像することができた。皮膚はゼリーのようにふくらんで、さわるとぬめりがあり、半開きの口から覗く舌は、黴が生えたみたいに黒ずんでぐったりしていて、髪にしみ込んだ海のにおいは、胃液のにおいと区別がつかなくなって……と、いくらでも詳細に切れ目なく並べ立てることができた。その上、わたしは少しもつらくないし、悲しくなかった。気持ちは、砂時計の砂のようにさらさらに乾いていた。 そ......
ここに意味を表示
死人・遺体の表現・描写・類語(人の印象のカテゴリ)の一覧 ランダム5
綿屑のようにころがる死骸
阿部 昭 / 千年 amazon
遺体は腐敗してどす黒く変色し、生前の面影を完全に失っていた。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
(鳩の雛の死骸)異臭を放ち始めている黄色い肉塊
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「人の印象」カテゴリからランダム5
四十メートルほども離れているので、その表情までは見極められない。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
少しでも油断すると生活やお金の話になるような気がして、それを避けるためにずっと僕は 物憂 げな表情を作っていた。
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon
吹き抜けの広々とした空間にちらほらとしかいない閲覧客が、館内の空気を外よりも寒々しく感じさせる。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
萃(人名)は特殊な空気を連れて歩いている。 人混みの中にいてもすぐわかる。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
人々が絶え間なく行き交っている。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
ついに肉体は無感覚で終わりました。
梶井基次郎 / Kの昇天
死病を宣告されると、これまで想を練っていた新しい方向がひどく鮮明に浮んできた。事実、その着想を得たときは昂奮して二、三日は夜も眠れなかった。その後もずっとその考えを追ってきたのだけれど今までぼんやりとしていたそれがここで明確になってきた。それも生きる期間を制限されて気持が急に真剣になったものか、神経的な感覚が尖鋭になったものかよく分らなかった
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
人の印象 の表現の一覧
生と死 の表現の一覧
人物表現 大カテゴリ