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(山の中で眠りに落ちる)疲れ切ってはいるが、それが不思議な陶酔感となって彼に感ぜられた。彼は自分の精神も肉体も、今、この大きな自然の中に溶け込んで行くのを感じた。その自然というのは 芥子粒 程に小さい彼を無限の大きさで包んでいる気体のような眼に感ぜられないものであるが、その中に溶けて行く、──それに還元される感じが言葉に表現出来ない程の快さであった。何の不安もなく、睡い時、睡りに落ちて行く感じにも多少似ていた。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:87% 作品を確認(amazon)
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眠りに落ちる・寝つく
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前後の文章を含んだ引用
......清浄、お山は晴天」という声が二三度聴えて来た。それからはもう何も聴えず、彼は広い空の下に全く一人になった。冷々した風が音もなく萱の穂を動かす程度に吹いていた。 疲れ切ってはいるが、それが不思議な陶酔感となって彼に感ぜられた。彼は自分の精神も肉体も、今、この大きな自然の中に溶け込んで行くのを感じた。その自然というのは芥子粒程に小さい彼を無限の大きさで包んでいる気体のような眼に感ぜられないものであるが、その中に溶けて行く、──それに還元される感じが言葉に表現出来ない程の快さであった。何の不安もなく、睡い時、睡りに落ちて行く感じにも多少似ていた。一方、彼は実際半分睡ったような状態でもあった。大きな自然に溶け込むこの感じは彼にとって必ずしも初めての経験ではないが、この陶酔感は初めての経験であった。これまで......
単語の意味
陶酔(とうすい)
肉体(にくたい)
陶酔・・・気持ちよく酔うこと。心を奪われてうっとりと気持ちのいいこと。
肉体・・・肉から構成されている体。生きている人間の体。生身の体。
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眠りに落ちる・寝つくの表現・描写・類語(睡眠・眠る・寝るのカテゴリ)の一覧 ランダム5
深い穴に沈み込んでいくような感覚がしばらくつづき、穴の底に着いた。目に見えたり体に感じたりというのではなく、しかし、ここが眠りの底なのだと確かにわかった。
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon
(二度寝)さめぎわの快い眠りにまた静かに落ちて行った。
有島武郎 / 或る女
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「睡眠・眠る・寝る」カテゴリからランダム5
まだ意識がぐるぐるかけまわっていたが、肉体のほうからずどん、という感じで眠りが落ちてきた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
長椅子には頭の禿げかけた中年男が乾燥魚みたいな格好で寝転んでいた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
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