渋谷駅前は幾つかの巨大スクリーンから流れる音が激突しては混合し、それに押し潰されないよう道を行く一人一人が引き連れている音もまた巨大なため、街全体が大声で叫んでいるように感じられた。

あらゆる音がジンタのように聞えて来る。

ブーンという都会特有の鈍い唸り（地下鉄の列車、ハンバーガーを焼く音、高架道路の車の音、自動ドアが開いたり閉まったりする音、そんな無数の音の組み合わせだ）が辺りを被っていた。

学生たちの取り留めのない声の束

吉祥寺が賑わうのはいつものことだったが、気温の変化が鼓膜にも変化をもたらすのか、街の喧騒さえもどこかラジオのスピーカーから聞こえるような朧げな響きがあった。

硫黄（いおう）が丘（たけ）の山頂――右肩をそびやかして、左をなで肩にした

山にせまられて帯のように細い領地

あたしたちは毎日、ずぶ濡れになるほどいろんな言葉を浴びせかけられているし、夕暮れ時には顎がだるく感じるほどしゃべってもいる。テレビをつけても、街を歩いていても、途切れることなく言葉が溢れ出す。ずぶ濡れどころか大きな湖《…略…》の真ん中で溺れてる気分だ。

隕石落下により、神社を中心とした広範囲が瞬時に壊滅した。家屋や森林の破壊に留まらず、衝撃により地表ごと大きくえぐられ、直径ほぼ一kmにも及ぶクレーターが形成された。さらに五km離れた地点でも一秒後にはマグニチュードの揺れが伝わり、十五秒後には爆風が吹き抜け、町の広範囲が甚大な被害に見舞われた。最終的な犠牲者は五百人以上にのぼり、それは町の人口の１／３にあたる。

戦争中の日本は嘘のような理想郷で、ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。