戦前の品川へ、二度ほど足を運んだことがあるが、貸座敷（遊女屋）、料理屋、茶屋などが軒を連ね、江戸時代の繁昌ぶりが、まだ名残りをとどめていた。 　大正の大震災にも、昭和の戦災にも品川は焼け残ったので、十数年前に久しぶりで、ゆっくりと品川を歩いたときも、大きな宿場町の微かな匂いが、裏道にただよっていた

古い学生寮だ。鉄筋コンクリート三階建ての質素なデザインで、決して大きくはない。くすんだ窓ガラスやカーテンの黄ばみやひびの入った外壁の様子から、その古さが伝わってくる。

四階建ての雑居ビルは築四十年以上。ひび割れが目立つ煤けた煤けた外壁には触手のようなツタがびっしりとからみつき不気味な雰囲気を醸し出している。今日も入り口に猫の死骸が転がっていたが陰気な風景にオブジェのようになじんでいる。

（あぶり餅屋）江戸のころを想わせる店構えも、いまはところどころに手を加えはじめたようだが、それでもまだ、古めかしい縁台に腰をかけて、おばあさんが焙ってくれる餅を食べていると、なんだか自分の頭にチョンマゲでものっているような気分になってしまう。《…略…》このあぶり餅には、まさに江戸のころの風味が残されており、周囲の環境と呼吸を合わせ、見事に一つの〔日本の情景〕をつくりあげているのだ。

骨董 屋みたいな小汚なくかつかっこいいバー

古い瓦屋根が慌てて化粧でもしたようにまぶしく光る

荘園みたいに大きな家

以前住んだことのある町に近かった。霜解け、夕凍（じ）み、その匂いには憶（おぼ）えがあった。

編笠（あみがさ）を被せたような藁屋根

迎え入れる感じじゃない店