チチ、チチ、と沢千禽 の声に、春はまだ、峠 はまだ、寒かった。木の芽頃の疎林 にすいて見える山々の襞 には、あざやかに雪の斑 が白い。
吉川英治 / 野槌の百 ページ位置:0% 作品を確認(青空文庫)
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晩冬・春先
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一 チチ、チチ、と沢千禽 の声に、春はまだ、峠 はまだ、寒かった。木の芽頃の疎林 にすいて見える山々の襞 には、あざやかに雪の斑 が白い。 「あなた。――あなた」 お稲は、力なく、前に行く人をよんだ。 かの女の十間ほど前を、三五兵衛は黙々と、あるいて行くのだった。 振り向いて、棘 のある眼が、 「なんだ?」 と、邪慳 にいった。 生まれてまだ六月か七月ぐらいな嬰児 を背に、つかれた足を、弱々と、引きずって来たお稲には、その十間の幅さえ、追いつくのに努力だった。......
単語の意味
疎林(そりん)
斑(まだら・むら・ぶち)
疎林・・・木と木の間から向こうの風景が見えるほど、立ち木がまばらな林。
斑・・・1.下地の色とは違う色が、不規則に混じっている模様。いろいろな色や濃淡の入りまじっている模様。また。そのさま。
2.1が転じて、ある現象が現れたり、現れなかったりすることのたとえ。はっきりした部分とそうでない部分があるのたとえ。
2.1が転じて、ある現象が現れたり、現れなかったりすることのたとえ。はっきりした部分とそうでない部分があるのたとえ。
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