どんな襖絵もかなわないほど豪華な、桜の大木。山桜だろうか。白い八重の花を枝先に無数に咲かせ、遠目には霞が湧き立ったように見えた。近づくと、花びらの縁がごくごく薄い緑色をしているのがわかる。山の緑を映したみたいに、すがすがしい色合いだ。

何かに取り付かれたように一晩中踊り明かす

私の仕事初日を祝うかのように桜の花が咲き

新学年がはじまると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉（わかば）と共に、青い海を背景にして、その絢爛（けんらん）たる花をひらき

春、そこいら中に狂ったように桜が咲き乱れてる日本という国

横向に庇（ひさし）を向いて開いた引窓から、また花吹雪（はなふぶき）を一塊（ひとかたま）りなげ込んで、烈しき風の吾を遶（めぐ）る

見上げるとピンクの花びらがはらはら降ってきた。

（桜の花びらは）くるくる舞いながら、または子供の頬に涙がころげ落ちるように、無造作に落下していた。

わが家の前へ至る細い路に、今日の雨に落ちた桜の花片がいちめんにつもっていた。

花びらの大半が散り落ちて、残骸のようになってしまった桜並木

春が間近で、高い山脈は寒い色をしていたが、近くの低地の林に薄い緑が乗った。風はまだ冷たかった。

春特有の気だるい空気

風に春の朝のうそ寒い湿り気が残る

春の柔らかさが風景をすべて包む

（梅の花の雄蘂は）一本一本が白金の弓のように身を反っていた小さい花粉の頭を雌蘂に向って振り上げていた。