鰹節でも昆布でもないうまみ。塩とも醤油ともつかない調味。すべてが渾然一体に溶け合って生まれる味だ

カツオと昆布からていねいにとったダシに、鯛の旨みが味に深みを与えている。三つ葉の香りもさわやかな逸品。

透き通ったダシと、豊かな香りを放つ松茸の上品なお吸いもの。手間を惜しまず、かつおと昆布からていねいにダシをとっているそうだ。

私は、吸い物椀を前にして、椀が微（かす）かに耳の奥へ沁むようにジイと鳴って いる、あの遠い虫の音のようなおとを聴き

（具だくさん汁）こんな鮮やかな味わいの合唱を楽しめるなんて！

ちりなべ、水たきなど、さっぱりして日本人の口にはあうけれど、若い人達にはちょっとものたらないのではないだろうか。

（京料理）生麩を桜花にかたどり、朱色をつけた、いかにも京の料理らしい

栗きんとんは、正月の懐かしい味

（ぼたん鍋）ぼたん鍋の固形燃料に仲居さんがチャッカマンで火をつけた。いのししの肉は赤みを残したままでも食べられますからと仲居さんに勧められ、早めに箸ですくい上げて食べてみると、甘くやわらかく、くさみはまるでなく、牛やブタとはちがってどこか野生的な風味でおいしい。添えつけのお野菜やエノキとよく合う。

会席料理は口になじみやすいように、脂っこいものとアッサリしたもの、ほどよい温かさのものと冷たいものが、頃合を見計らって順に出される