視線が、記述をなぞっていく。 　眼球の動きが、ふいに止まった。

物の本の一章をめくるような興味と期待で、きいた。

僕たちはいつも強い好奇心で、その人の謙遜な身なりを嗅ぎ、その人の謙遜な話に聞き惚れた。

何があったのかな。 　あたしの中で好奇心がもぞりと動く。

（開けてはいけないと感じる不吉なガラスビンを前にして起こる恐怖と好奇心の葛藤）息を詰めたまま金属製のねじ蓋に手をかける。蓋は強く締まっている。このおかしな感じ、まるでガラス壜ではない何かをこじ開けて、口で言えないほど不吉なものを解き放とうとしているような感じはどこからくるのだろう？ 　フレテハイケナイ――カンガエテハイケナイ――。 　声がまた聞こえる。頭のなかではなく、天井のあたりから降ってくる気がする。キョトキョトと周囲を見回す。部屋の空気が重く脈打っている。ベッドも衣類も壁もどくんどくんと脈打っている。蓋にかけた手が震える。震えが背筋を伝い、正座したまま上半身が他愛なく揺れる。《…略…》頭のなかにも部屋のなかにも動悸が響き渡る。嵐のようなその音のほか何も聞こえなくなる。まるで自分自身の心臓の内部にいるみたいだ。視界全体が拍動する。どくんどくんと叫ぶ。イケナイ、イケナイ、イケナイ、イケナイと叫ぶ。頭が割れる！　壜から手を離し、両側から強く 頭蓋 を挟みつける。

事実は一握りの人間のあいだだけの秘密として保たれる。

表沙汰にすることを避ける

（隠し事がばれない）きっといつか、すべてを蒔野が知る時が来る。その恐ろしい不安は消えることがなかったが、一月経っても、二月経っても何事も起きず、彼女は、自分の罪が、知らぬ間に、もう半ば〝なかったこと〟になりつつあるのを知った。誰も気づかなかった。そして、これからももう気づかれることはないだろう。そう考えて、彼女は罪悪感を横目で見つつ、やはり安堵の方に先に手を伸ばした。

（秘密を打ち明けられて）私と父の間に、生まれて初めてある種の親密さが生まれたような気がした。

頑ななまでに守り通した秘密

好奇心を持った犬のような顔になる。

太陽のように捕え得ず、しかも、四時明るく、暖かく、ふれる心を生かす愛

春の夜のような心のときめき

心に情熱が高まるのを感じる

心のしまりがなくなる

幼児のようにあどけない憧れ

食指が動く

心の中に何かがぽっと点火されたようなほの温かさ

兄が妹を想うような親身の情が溢れる

胸が焼けるほど恋しい

固くカギをしめて、心の奥に埋めておく。あたしの心が疼く。好奇心だ。カギを開けてのぞき見したいと疼く。

友愛

好ましい

耐え難い慕情

食欲のないとき、病気のときも、がめ煮と玉子焼きがでて、それで父のご機嫌がよくなる

微弱ながら恋の心の動くのを自覚しました。

風向きなんてあっという間に変わっちまう。小松が真剣な顔をして高い崖の上に立ち、指を舐めて風向きを測っている光景を天吾は思い浮かべた。

巷間に色々と取りざたされる

犀利無比ともいうべき観察の目で見る

小川さんが流行に流されているのではなくて、小川さんのような女の子たちから、流行とは自然発火していくんじゃないかと思う。小川さんが可愛いと手に取ったものが、少しずつ女の子の中で流れていき、水流になっていくような気がする。

（流しの唄うたいの唄が流行る）その唄が時の巴里の物足りなく思っている感情の欠陥へこつりと嵌まり込めばたちまち巴里じゅうの口から口へ移されて三日目の晩にはもうアンピールあたりの一流の俗謡の唄い手がいろいろな替唄までこしらえて唄い流行（はや）らしてくれるし譜本は飛ぶように売れ始まる。