（刀で切られた死体が）ゆっくりと引っ張っていく。すると黒い血がどこまでもその死体から帯のように流れていった。

傷口から迸（ほとばし）る血潮は、石垣の隙間を漏れる泉のように滾々（こんこん）として流れ始める

緑色の内出血

赤い寒天のような凝血

血は乾いて、壁土のように、白い皮膚にこびりついていた。

どきんどきんと動悸が打つ気がする

頭に切れ目を入れ、後頭部から額へと頭皮を剥いでいった。顔の表面、目や鼻や口の部分に、ゴワゴワとした剛毛がかぶさり、頭皮の白い裏側が無影灯にさらされる格好だった。皮一枚で顔が作られているのがよくわかる。安藤は、頭蓋骨をはずして脳を取り出した。

（大脳）意識が宿る灰色の迷宮

メスを手に入れると、顎の下に差し込み、下腹部まで真一文字に分厚い筋肉を引き裂いていった。死後十二時間を経た屍体内部から体温は完全に抜け切っている。カッターで肋骨を折り、一本一本除去して左右の肺を取り出し、助手に渡す。

鬼灯（ほおずき）をつぶしたような血の塊（かたまり）