(炭坑町の直方は)門司のように活気のある街でもない。長崎のように美しい街でもない。佐世保のように女のひとが美しい町でもなかった。骸炭 のザクザクした道をはさんで、煤けた軒が不透明なあくびをしているような町だった。駄菓子屋、うどんや、屑屋 、貸蒲団屋、まるで荷物列車のような町だ。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:1% 作品を確認(青空文庫)
この表現が分類されたカテゴリ
炭坑の町
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......て、母が後押しで炭坑や陶器製造所へ行商に行っていた。 私には初めての見知らぬ土地であった。私は三銭の小遣いを貰い、それを兵児帯 に巻いて、毎日町に遊びに出ていた。門司のように活気のある街でもない。長崎のように美しい街でもない。佐世保のように女のひとが美しい町でもなかった。骸炭 のザクザクした道をはさんで、煤けた軒が不透明なあくびをしているような町だった。駄菓子屋、うどんや、屑屋 、貸蒲団屋、まるで荷物列車のような町だ。その店先きには、町を歩いている女とは正反対の、これは又不健康な女達が、尖 った目をして歩いていた。七月の暑い陽ざしの下を通る女は、汚れた腰巻と、袖のない襦袢 きりで......
単語の意味
軒(のき)
骸炭(がいたん)
軒・・・屋根の端の下にさがった部分で、建物の外壁より突き出ている部分。
骸炭・・・コークスのこと。石炭を高熱で蒸し焼きしたあとに残ったもの。無煙で火力が強い。
ここに意味を表示
炭坑の町の表現・描写・類語(家・建物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(炭坑の町)直方の町は明けても暮れても煤 けて暗い空であった。砂で漉 した鉄分の多い水で舌がよれるような町であった。
林芙美子 / 新版 放浪記
このカテゴリを全部見る
「家・建物」カテゴリからランダム5
お天気の日を選んで夜店を出す
林芙美子 / 新版 放浪記
大阪のどの町角、どの店にも、芝居の仕事をしていたころの自分の姿がしみついているようなおもいにさえとらわれる。
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
このあたりの閑静な住宅街のおもかげは、むかしのままのような気がする。
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
家・建物 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ