稲光が走り、前より明らかに大きな雷が鳴った。その光だけは、雨にも暗闇にも邪魔されることなく空を貫いた。消えたあともじっと見惚れてしまうような稲光だった。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:75% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
雷の光・稲妻
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......「子供が夏にキャンプをする。すばらしいじゃないか。健康と平和の象徴だ」 博士はクッションにもたれ掛かり、伸びをした。博士の息にはまだメロンの匂いが残っていた。 稲光が走り、前より明らかに大きな雷が鳴った。その光だけは、雨にも暗闇にも邪魔されることなく空を貫いた。消えたあともじっと見惚れてしまうような稲光だった。「今の、間違いなく落ちましたよね」 私は言った。博士は「ううん」と唸っただけで、答えなかった。床にも雨が飛び散っていた。私は彼のズボンが濡れないよう、裾を折り曲......
単語の意味
見惚れる(みほれる・みとれる)
稲光り(いなびかり)
暗闇(くらやみ)
見惚れる・・・あるものに心引かれて、ぼーっと見る。素敵なものに我を忘れて見入る。見とれる。
稲光り・・・雷の電光。稲妻。
ここに意味を表示
雷の光・稲妻の表現・描写・類語(雷のカテゴリ)の一覧 ランダム5
それは、暴力的な稲妻ではなく、もっときれいではかない光だった。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「雷」カテゴリからランダム5
稲妻の度にその炎は地上まで閃き、二人のまわりの杉の幹まで照らした
川端康成 / 古都 amazon
夏が自殺するかのような荒々しい雷の足音
川端康成 / 掌の小説 amazon
今まで出会ったことのないくらい激しい雷だった。あまりにも激しすぎて、最初は幻想的な夢を見ているのかと思った。群青色の夜の中を短い光が何度も走り、そのたびにガラスの食器棚が倒れ粉々に砕けるような音がした。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
雷 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ