そこでは時間がおだやかな風のように流れていた。

時間の流れをはっきり感じている。今が過ぎ、また今が来、すぐ今が来てまた過ぎていく。

死人は、その死んだ後（のち）に於ても、その無感覚の感覚によって、時間の流れを感じているとすれば、一秒時間も、一億年も同じ長さに感じている筈である。又そう感ずるのが死後の真実の感覚でなければならぬので、すなわち一秒の中（うち）に一億年が含まれていると同時に、宇宙の寿命の長さと雖（いえど）も一秒の中（うち）に感ずる事が出来る訳である。この無限の宇宙を流れている無限の時間の正体は、そんなような極端な錯覚、すなわち無限の真実の裡（うち）に、矢の如く静止し、石の如く疾走しているものに外ならないのである。

春と夏とが同時に押し寄せてきたかのように、季節が急速に進む

卵がたっぷりと入ったカルボナーラのソースはあっという間に固まってしまった。

トンビがひと鳴きするくらいの、あっという間

停車し、ドアが開ききるのももどかしく、俺は電車から駆け出す。

パッケージに印刷された成分表を見たりしている。

時間はそこから始まり、流れ、たゆたい、野呂がわたしから去って行った後もなお、その流れは音もなく続いて今に至っている。

一秒が十分のようなに長く感じられる