黄色く熟した田

刈田は青黴（あおかび）の色に見えた。

稲の切り株から心細げに、蘖（ひこばえ）の薄緑

野には稲が黄色く実る

見渡す限りに実った稲の穂が不規則な朝の風に奇妙な波の線を描き出していた。

淡いオレンジの夏アカネだ。七月も終わりになる頃、このトンボは、あたしたちの街のあちこちに、群れて飛ぶ。夏の盛りと秋の始まりが、もうそこまで来ていた。

木々の葉が、一日ごと剥（は）がれてゆく

空の天井が抜けたような秋

ラウンジの大きな窓からは初秋の雨が見えた。雨はあいかわらず音もなく降りつづき、その奥の方に街の光が様々なメッセージをにじませているのが見えた。ラウンジには客の姿は殆んどなく、湿っぽい沈黙があたりを支配していた。

年代相応に立派な銀杏の木が、古ぼけた四階建てのアパート群の足元に、乾いた落葉を敷きつめている。