私たちは、ゆっくりと、お互いの体温の中に落ちていった。《…略…》私たちの欲望が、音楽になって互いの身体に流れ込む。 伊吹に発情を奏でる私《…略…》身体の中にあった、言語化できなかった感情たちが、液体になって、伊吹にしみこんでいった。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 ページ位置:98% 作品を確認(amazon)
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セックス
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前後の文章を含んだ引用
......声で言った。「なんだか、そういうものが流れ込んでくる感じがする」 伊吹が少しだけ目を細めた。その睫毛の先の光が、伊吹の瞼の動きに合わせて、震えるように揺れた。 私たちは、ゆっくりと、お互いの体温の中に落ちていった。 私はやっと、自分が白い街の外に流れ出ていくのを感じていた。「伊吹の骨、熱いね。きっと、伸びてるんだ」 囁くと、伊吹が声にならない声で、喉の奥でかるく呻いた。 ......<中略>......、また谷沢が変なことを言っているなあ、とでもいうように、濡れた目を細めたあと、また私の中を泳ぎだした。 汗ばんだ伊吹の皮膚を、醜くて美しい私の指がたどっていく。私たちの欲望が、音楽になって互いの身体に流れ込む。 伊吹に発情を奏でる私は、信子ちゃんには届かないまでも、とても美しい。そう思える価値観を手に入れていた。 伊吹は、私を静かに丁寧に食べた。私もそれ以上は口では喋らず、あとは溜息になった呼吸を繰り返すだけだった。 身体の中にあった、言語化できなかった感情たちが、液体になって、伊吹にしみこんでいった。伊吹の呼吸が、ゆっくりと温度を増していく。その濡れた呼吸の音色に耳を澄ませながら、瞳を閉じた。 そして、私は、自分が、ずっとたどり着きたかった体温の中へたどり着......
単語の意味
身体(しんたい)
身体・・・人のからだ。肉体。
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(十数年ぶりの恋とセックス)性の営みは遠い昔、夫と呼んだ男と日常の儀式のように交わしたことがあった。苦痛というほどではなかったが、それほど甘味なものでもなかった。それから十数年、体の底で熱い熔岩がいつか噴き出す日を待って静かに 脹らみフツフツとたぎっていたのだろうか……。
阿刀田 高 / 狂暴なライオン「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
伊豆の別荘で潮風にまみれて、いとおしんだサユリの手や足たち。それらの饒舌で美しい蜘蛛のようなゆったりとした動き。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
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ものわかりのいいプッシィ
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
(発情を抑える)皮膚の中で熱くなる欲望を冷やしたくて、ラムネを流し込んだ。少しぬるくなった泡が、食道を引っ掻きながら内臓へ落ちていく。自分でもコントロールできない内臓の疼きを抑え込みたくて、私はその水色の瓶を必死に傾けた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
とにかくただ必死な快楽の感触。自分がものになって、 身体 は精神に溶けてゆくようなあの時間。 あの、後ろめたい青空。光、緑。何もかもに後ろめたくて消えいるほどせつなくなる真昼。
吉本 ばなな / 大川端奇譚「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
何もかも振り捨てて私は生れて初めて恋らしい恋をしたのだわ。
林芙美子 / 新版 放浪記
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