家が灰燼に帰する

家々の背面が、芝居のあさぎ幕のように明るくなり、激しい火の手があがった。

凄まじい唸りを立てて町全体が燃える

小屋が太い火束となって盛んに燃える

煙は勢いよくなったかと思うと少し収まりというのをくりかえしていた。人々は大声で何かを叫んだり命令したりしていた。ぱたぱたと大きな音をたてて新聞社のヘリコプターがやってきて写真を撮って帰っていった。

衝動的な凶行に走る

仮説を粉砕する絶対の槌

トラックに跳ね飛ばされて、向かいから来たライトバンにひかれた。即死だった。

（無罪になったがやはり犯人では？）捜査当局にとって冤罪者である彼はジョーカーですよ。我々は一度お手つきをしてしまった。二度目は許されない。確たる証拠がなければこのカードはめくれないんです。

（犯罪者を死刑にするのではなく更生させるのが大事という考え）社会全体を一つの大きな生き物として考えますとね、悪いところを切り捨てていっても強く健康な生き物にはならないですよ。生命力が一番大事なんです。生命力とは自浄能力であり再生能力であると。犯罪者の更生もそういうことなんですね。切り捨てればいい社会になるかというと、そうじゃない。それはある意味、不健全なんです

炎が、生きているように黄金色に光りながら家をのむ

汐風が、薪（たきぎ）の中から紅蓮（ぐれん）の舌を煽り出す

立ち込めた黒煙がまとわりついてくる

めらめらと舌をはいてもえさかる炎

僕は姿勢を低くした。そうすることで煙が弱まってくる。目線を床に近づければ近づけるほど炎が灯りとなってほんのりと視界が利いてくるようになった。そして目の痛みも和らぎ、少しだけ呼吸も楽になった。