死人は、その死んだ後 に於ても、その無感覚の感覚によって、時間の流れを感じているとすれば、一秒時間も、一億年も同じ長さに感じている筈である。又そう感ずるのが死後の真実の感覚でなければならぬので、すなわち一秒の中 に一億年が含まれていると同時に、宇宙の寿命の長さと雖 も一秒の中 に感ずる事が出来る訳である。この無限の宇宙を流れている無限の時間の正体は、そんなような極端な錯覚、すなわち無限の真実の裡 に、矢の如く静止し、石の如く疾走しているものに外ならないのである。
夢野久作 / ドグラ・マグラ ページ位置:36% 作品を確認(青空文庫)
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死人・遺体
時間の経過
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前後の文章を含んだ引用
......、前者はたまらない程長く感ずるのに反して、後者は一瞬間ほどにも感じない……というのが偽らざる事実でなければならぬ。 更に今一歩進んでここに死人があるとする。その死人は、その死んだ後 に於ても、その無感覚の感覚によって、時間の流れを感じているとすれば、一秒時間も、一億年も同じ長さに感じている筈である。又そう感ずるのが死後の真実の感覚でなければならぬので、すなわち一秒の中 に一億年が含まれていると同時に、宇宙の寿命の長さと雖 も一秒の中 に感ずる事が出来る訳である。この無限の宇宙を流れている無限の時間の正体は、そんなような極端な錯覚、すなわち無限の真実の裡 に、矢の如く静止し、石の如く疾走しているものに外ならないのである。 真実の時間というものは、普通に考えられている人工の時間とは全く別物である。むしろ太陽、地球、その他の天体の運行、又は時計の針の廻転なぞとは全然無関係のままに......
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死人・遺体の表現・描写・類語(人の印象のカテゴリ)の一覧 ランダム5
ネグリジェの中の体は冷えた粘土のように堅く、重かった。
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
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時間の経過の表現・描写・類語(時間・スピードのカテゴリ)の一覧 ランダム5
時間は透明な川のように、あるがままに流れている。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
春と夏とが同時に押し寄せてきたかのように、季節が急速に進む
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
時間の過ぎていくのを骨身にしみて 愛しく感じる。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
緩やかな水の流れのように時が彼の体を通り抜けていく
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
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「時間・スピード」カテゴリからランダム5
「人間は時間を直線として捉える。長いまっすぐな棒に刻み目をつけるみたいにね。こっちが前の未来で、こっちが後ろの過去で、今はこのポイントにいる、みたいに。《…略…》でも実際には時間は直線じゃない。どんなかっこうもしていない。それはあらゆる意味においてかたちを持たないものだ。でも僕らはかたちのないものを頭に思い浮かべられないから、便宜的にそれを直線として認識する。《…略…》つまり時間を永遠に続く一直線として捉え、そのような基本的認識のもとに行動をしてきた。そしてこれまでのところ、そうすることにとくに不都合や矛盾は見いだせなかった。だから経験則としてそれは正しいはずだ」
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
猫のようにすばやく
宮沢賢治 / セロ弾きのゴーシュ
「人の印象」カテゴリからランダム5
人込みの中に静かに溶けてしまいそうな、地味なおばあさん
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
引き締まった筋肉質の身体も、無造作な短髪も、まるで現役のスポーツ選手のようだ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
死病を宣告されると、これまで想を練っていた新しい方向がひどく鮮明に浮んできた。事実、その着想を得たときは昂奮して二、三日は夜も眠れなかった。その後もずっとその考えを追ってきたのだけれど今までぼんやりとしていたそれがここで明確になってきた。それも生きる期間を制限されて気持が急に真剣になったものか、神経的な感覚が尖鋭になったものかよく分らなかった
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
(喪失感をまぎらすためにジョギングを始めた私と亡くなった彼女のセーラー服を着て過ごす柊という男)彼のセーラー服は私のジョギングだ。全く同じ役割なのだ。私は彼ほど変わり者でないので、ジョギングで充分だっただけのことだと思う。彼はそのくらいでは全くインパクトに欠けて自分を支えるにはもの足りないのでバリエーションとしてセーラー服を選んだ。どちらもしぼんだ心にはりを持たせる手段にすぎない。気をまぎらわせて時間をかせいでいるのだ。 私も柊もこの二カ月で、今までしたことのない表情をするようになった。それは失ってしまったものを考えまいと戦う表情だった。ふっと思い出して突然に孤独が押してくる闇の中に立っていると知らず知らずのうちにそういう顔になってしまうのだ。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
人間が犬のごとくに死んでいる
坂口 安吾 / 白痴 amazon
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