野性味とたくましさに溢れ、命の漲った強い男の顔

頑丈で意志の強そうな目鼻立ち

秋の風のように吹きさらしの面がまえ

きつく眉を寄せた興福寺の少年阿修羅のような顔

つい今しがた兵隊から帰ってきたみたいに精悍な面構え

葉子だけは春が来てもやせた。来るにつけてやせた。ゴム毬（まり）の弧線のような肩は骨ばった輪郭を、薄着になった着物の下からのぞかせて、潤沢な髪の毛の重みに堪（た）えないように首筋も細々となった。やせて悒鬱（ゆううつ）になった事から生じた別種の美――そう思って葉子がたよりにしていた美もそれはだんだん冴（さ）え増さって行く種類の美ではない事を気づかねばならなくなった。その美はその行く手には夏がなかった。寒い冬のみが待ち構えていた。

煙突から這い出してきたような煤だらけの顔

馬のように長い顔

彼の横顔を見た。顎の曲線が濡れた果実のように見えた。

目鼻立ちのどれ一つをとっても美しいものはない