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街を抜ける大きな交差点の所で、私も柊もほんの少し気づまりを感じる。そこは、等とゆみこさんの事故の現場だった。《…略…》ひそやかに厳粛な気持ちが訪れる。愛する者の死んだ場所は未来永劫時間が止まる。もし、同じ位置に立てたなら、その苦しみも伝わるといいと人は祈る。よく観光で城なんかに行き、何年前、ここを誰々が歩いたのです、体で感じる歴史です。とか言うのを聞く度に、なに言ってんだと思ったものだが、今は違う。わかる気がする。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 ページ位置:35% 作品を確認(amazon)
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事故現場
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前後の文章を含んだ引用
......情をした。あれはちょっと忘れがたい。私のこの苦しみも哀しみもあれには全然至らない、そんな気がした。もしかしたら私にはまだまだやれることがあるような気にさせる。 街を抜ける大きな交差点の所で、私も柊もほんの少し気づまりを感じる。そこは、等とゆみこさんの事故の現場だった。今も、激しく車がゆきかっている。赤信号で、柊と私は並んで立ち止まった。「地縛霊はいないのかな。」 柊が笑って言ったが目は決して笑っていなかった。「言うと思った。」 私も笑ってみせた。 ライトの色が交差し、光の河が曲がってくる。信号が闇に明るく浮かぶ。ここで、等が死んだ。ひそやかに厳粛な気持ちが訪れる。愛する者の死んだ場所は未来永劫時間が止まる。もし、同じ位置に立てたなら、その苦しみも伝わるといいと人は祈る。よく観光で城なんかに行き、何年前、ここを誰々が歩いたのです、体で感じる歴史です。とか言うのを聞く度に、なに言ってんだと思ったものだが、今は違う。わかる気がする。 この交差点、このビルや店の並びが浮かぶ夜の色彩が等の最後の景色だ。そしてそれはそんなに遠い昔ではない。 どんなに、こわい思いをしたか。ちらっとでも私を思い出し......
単語の意味
厳粛(げんしゅく)
体(からだ)
永劫(えいごう・ようごう・ようこう)
厳粛・・・1.真剣な態度をせずにはいられない雰囲気のさま。「厳粛な儀式」
2.まじめで甘えや妥協などないさま。「判決を厳粛に受け止める」
・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
永劫・・・非常に長い年月。「劫(こう・ごう)」は仏教における時間の最長単位で「きわめて長い時間」のこと。
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前手錠に 腰紐 をくくられた猿回しの猿のような格好で、
浅田次郎 / ろくでなしのサンタ「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
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