風が出たのか、雨戸が難破船のようにゆれて

綺麗ではないけれど、拭きこんだ格子

袋のようなたった一つの出入口

磨りガラスのドアがあり、月明かりを浴びてガラスに埋め込まれた格子状の鉄線が浮かび上がっている。

雨は上がり、すりガラスの窓が一面銀色に輝いている

熟れて落ちた桃が、地上で蒸れて腐りながら放つ甘ったるい芳香は、まだ庭にも家の中にも充満していて

（暗い窓ガラス）暗い窓ガラスが鏡のように自分の姿を映した。《…略…》窓に近づくと、 暗闇 でしかなかった窓の奥に、白い一点の光が浮かびあがった。さらに近づくと、その空間は画廊であり、光のように見えた点は絵画の一部だとわかった。窓ガラスに鼻が触れるほど顔を寄せて内部をのぞく。徐々に眼が暗闇になれ焦点が合ってくる。

カチャカチャカチャと皿や食器の触れ合う音

テレビの無意味な会話が耳の奥に引っ掛かって、わたしを苛立たせた。

換気扇が回っているのか、プロペラが回転する音が聞こえる。